通常国会がきょう、閉幕する。

 安倍晋三政権が提出した法案は57本。改正子ども・子育て支援法など54本が成立した。

 これだけの法律が成立したのに、与野党で激しい論戦が交わされた印象はほとんどない。

 参院選を前に、政府・与党が野党との「対決法案」を避け、無難な審議に注力したためだ。

 政府を監視する役割が奪われた国会だったのではないか。

 論戦の低調さを象徴していたのは、衆参両院の予算委員会が本年度予算案の可決後、一度も開かれずに終わったことだ。

 衆院は3月1日、参院は同27日以来開かれていない。野党は首相が出席する集中審議を度々求めてきたが、与党は応じなかった。

 参院選を前に、首相や閣僚が野党の質問に長時間さらされる集中審議を開いても得なことはない、という与党の思惑と打算が議論の機会を封じ込めた。

 実際には、議論を深めるべき内政や外交の課題は山積している。

 「老後に夫婦で2千万円の蓄えが必要」とした金融庁の審議会報告書で年金不安が高まっている。

 政府は公的年金財政の健全性を5年ごとに点検する「財政検証」の公表を参院選後に先送りした。

 本来なら、検証結果を早急に公開し、年金制度の将来を含めた議論をしたうえで参院選に臨むべきではないのか。

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡る防衛省の測量や調査のミスは、防衛政策全体の信頼性を揺るがしかねない事態だ。

 北朝鮮に対し安倍首相が「最大限の圧力」という方針から「無条件での首脳会談の呼びかけ」へかじを切ったことや、北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉への姿勢なども、国民に説明が要るのではないか。

 これまでは安倍首相の挑発的な答弁や与党の強引な国会運営が目立ったが、今国会では「安倍隠し」ともいえる戦略が際立った。

 いずれにしても、強すぎる行政府が立法府を軽んじた結果といえる。

 もっとも、政府・与党が吹かす「解散風」を浴びた野党のふらつきが目立ったのも事実だ。

 最終盤、安倍首相の問責決議案と内閣不信任決議案を提出したが、立憲民主党と国民民主党の足並みはそろわなかった。

 課題が深まらないまま参院選に突入しても、有権者は選択に困る。各党は実のある政策論議を展開するよう努めてほしい。