ハングルに翻訳された絵本なども並ぶ「おとなりどうし」の会場(大阪市北区・MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)

ハングルに翻訳された絵本なども並ぶ「おとなりどうし」の会場(大阪市北区・MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)

 昨年から童話文学作家、ひこ・田中さん(66)の連載「子どもの本から世界を見れば」などを担当している。子どもだけのものと思われがちな絵本や童話だけれど、ひこさんは「大人にも読んでほしい」と話す。

 私にとって絵本や童話に触れるのは、子どもの時以来。ひこさんから原稿が届くたび、物語のテーマに驚いた。プラスチックごみ問題、会社で働くこと、戦争の悲惨さ、性自認や人種の違い、恋をする喜び、大切な人との別れ―。国内外で出版された絵本や童話に、現代社会が抱える問題、普遍的な営みや悩みが取り上げられていた。

 話題の絵本を多く手がける京都市在住のフリー編集者、筒井大介さん(41)は「東日本大震災以降、世の中が窮屈になっている」と話す。そんな社会のありようは、子どもの社会にも反映される。同調圧力、貧困、会員制交流サイト(SNS)で空気を読む―。「子どもを取り巻く生きづらさは、僕が子どもだった時よりも露骨で複雑になっている」と筒井さんは言う。海外でも、差別的発言を繰り返すトランプ大統領が登場し、極右排外主義が台頭している。

 楽しくて面白い絵本を作りたい。でも、「それだけじゃない」と筒井さん。「生きづらさなど現代の問題が背景に感じられられる絵本も作りたい。絵本とは、子どもの考えや想像力を自由に広げていくもの。小さな人たちが世の中の現状を受け止めた上で、希望が感じられるものを提示する。それが絵本だと思うのです」

 シンプルな言葉づかいと美しい絵がお互いに補完しながら、複雑で難しいテーマを表現する絵本。だからこそ、年齢を問わず多くの人の心に響くのだろう。そんな絵本の力を通して、人や社会のありようを見つめ直そうとしているのが、30日まで大阪市のMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店で開催中のブックフェア「おとなりどうし」だ。関係が悪化している韓国について、今こそ、お互いに理解を深めようと、韓国の絵本などを紹介している。

 うんちが自らの存在価値に悩む「こいぬのうんち」、スイカがプールになっておじいさんたちが泳ぐ「すいかのプール」など多くの韓国絵本が並ぶ。韓国の絵本って面白いんだ。その思いこそが、親近感だと気づかされた。

 同書店の森口泉さん(48)は話す。「子どもたちは『あの国の絵本を読みたくない』などは考えず、好きな絵本を手に取る。そこに国境や人種の違いはない。絵本を通じて風通しの良い世の中になればと思います」

 読書は苦手、子ども向けの本だなどと距離を置かず、絵本を手に取ってみてほしい。息苦しい現代を生きる上で心の支えや指針になる。そんなかけがえのない1冊になるかもしれないのだから。