洛西ニュータウン方面へ向かう緑色車体の市バス「73」に乗り込もうとする着物姿の女性(京都市下京区、JR京都駅前)

洛西ニュータウン方面へ向かう緑色車体の市バス「73」に乗り込もうとする着物姿の女性(京都市下京区、JR京都駅前)

嵐山へ向かう京都バス「73」乗り場で、案内スタッフに英語で確認する観光客

嵐山へ向かう京都バス「73」乗り場で、案内スタッフに英語で確認する観光客

市バス「73」乗り場で、嵐山方面へ行かないことを説明する表示

市バス「73」乗り場で、嵐山方面へ行かないことを説明する表示

 京都市下京区のJR京都駅前から観光地の嵐山方面へ向かう京都バス「73」号系統の隣で、同じ番号表示の市バス「73」号系統の洛西ニュータウン方面行きが発着する。「乗り間違える外国人に何人も出くわす。知らない土地で知らないバス停で下ろされたら不安しかない」と改善を求める声が、京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に西京区の女性から寄せられた。市交通局は掲示で注意を呼びかけたりスタッフによる案内に務めているとしているが、間違えそうな例を記者も現場で目撃した。抜本的な対策は系統番号を変更するしかないようだ。

■「嵐山、ノーノー」

 京都駅前バスターミナルは紅葉シーズンのこの時期、観光客でごった返す。C6乗り場の順番待ちの長い列は土曜と日曜の午前、地図やバス路線図、スマホを手にした欧米系やアジア系の人たちが目立つ。英語や中国語で対応できる紫色はっぴ姿の案内スタッフに嵐山へ行くこと確かめてから、あずき色をした車体の京都バス「73」に乗り込む人が多い。
 二十数歩隣のC5乗り場に到着したのは、同じ「73」との表示ながらも市交通局が運行する緑色の車両だ。行き先は「洛西バスターミナル」と示されている。経路は市立病院や西京極総合運動公園、五条通など地元住民の利用が主体となるルートだ。
 着物を身につけた女性2人が早足で近づくと、乗車口からステップを上がった。と、車内の座席から立ち上がった年配男性が「嵐山、ノーノー」と手を振るしぐさを交えて乗り込むことを制止した。けげんな表情をしながら車外に降りた2人は、案内スタッフに尋ねてから嵐山方面行きの列に移り、最後尾に並び直した。
 市バス「73」の到着待ちをしていた年配女性は「私も何度か同じ光景を見ている。嵐山へ行かないことへの運転手のアナウンスは聞いたことがない」と話す。
 運行主体と行き先が異なる73号系統の乗り間違いについては2月の本紙読者投稿「窓」欄にも目撃談を交えて「番号を頼りに乗車して不安な思いをした外国人観光客もいるのではないか」と草津市の主婦からの意見が掲載された。
 市交通局は、乗り場に「○」「×」表示で嵐山方面に市バス「73」号系統が行かないことを、昨年4月から英語を交えて掲示している。桜の開花や紅葉シーズンには案内職員の配置を強化しているという。「なんとかしないといけないと認識し、有人による案内の強化に努めている」(運輸課)と説明する。
 それでも間違いがなくならないことについて「究極的には系統番号の変更をめざすべきだが、周知の期間やバス本体や停留所、路線図など変更に要する費用面で、すぐには難しい」と話している。

■速やかに解消を 国交省ガイドライン

 インターネット検索エンジン「グーグル」で、京都駅から嵐山へのバスルートを英語で検索すると、市バスは「Kyoto City Bus」、京都バスは「Kyoto Bus」とそれぞれ表記される。車体の色が緑色と茶色と異なることが補足して説明されている。系統番号を画面で見ただけの観光客が、運行主体や行き先の違いまで理解できるとは考えにくい。
 「ナンバリング」とバス事業関係者が呼ぶ系統識別番号の問題については、訪日観光客が増加するなかで京都市バスと京都バスの「73」号系統だけの現象にとどまらない。国土交通省は観光立国を目指す環境整備上の課題と位置づけ、「ナンバリングに関するガイドライン」を2018年10月に定めた。
 そこでは「異なる運行系統に同じ番号が付与されている場合には、そのような状況を速やかに解消する必要がある」としている。ガイドラインの例示を「73」にあてはめて解釈すると、利用者数が多い系統は引き続き同じ番号を使用し、他方の運行系統についてはアルファベットを加えて「73A」「73B」とするか、百の位を新たに加えて「173」番とすることになる。
 とはいえ、系統番号の変更がバス運行事業者にとってただちに実施しにくい理由についても同ガイドラインは言及する。バス本体や停留所、各種案内板、マップなどの表示変更への投資費用を回収できるだけの増収効果が得られるとは限らず、実現しないケースがみられることを課題として挙げている。
 バスを運行する事業者だけでなく、鉄道事業者や自治体、観光協会など幅広い関係者がテーブルについての利害調整と議論が欠かせない。京都の「73」という特定の系統だけでなく、日本の社会全体が「おもてなし」の体制をどう整備していくのかという課題を示しているようだ。