災害時に連絡が取れなくなった人の氏名を公表すべきかどうかについて、全国の知事の6割が公表に前向きな考えであることが、共同通信の調査で明らかになった。

 公表が捜索や人命救助に役立つと認識している知事も多く、今後は公表が進む可能性がある。

 昨年7月の西日本豪雨では、岡山県が安否不明者の氏名をいち早く公表したことで多くの情報が集まり、約30人の生存が確認された。一方、広島県は市町村の承諾を得ていないとして人数だけの公表にとどまり、対応が分かれた。

 2015年の豪雨災害では茨城県常総市が不明者15人の情報を非公開にしたまま捜索を続け、後に全員無事と判明した。結果的に、捜す必要のない人たちの捜索に時間を費やしていたことになる。

 一刻を争う救助の現場で、不明者情報の有無は捜索の効率を大きく左右する。迅速な対応ができるよう、自治体は公表に向けた環境整備を急いでほしい。

 すでに独自の氏名公表の基準作りに着手した都道府県もある。

 宮崎県は、ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)の被害者として住民基本台帳の閲覧制限がかかっていないなどの要件を設け、氏名を公表するという。高知県は、災害訓練に氏名を公表する手続きを取り入れた。

 公表の基準を事前に作っておけば、災害が発生した時に公表を巡って余分な労力が使われるのを防ぐことができる。

 共同通信の調査では、公表に際して、個人情報の外部への提供を原則禁止している個人情報保護法・条例との関係を懸念する知事も少なくなかった。岡山県の伊原木隆太知事も、当初は当事者の批判や訴訟リスクを想定したという。

 ただ、条例の多くは、人命や財産保護のため緊急の必要がある場合は情報提供禁止の例外とする規定を設けている。

 国の防災基本計画も氏名公表には言及していないものの、死者や不明者の数は都道府県に一元的に集約するとしている。

 こうした点をふまえれば、災害時に個人情報を公表すべきかどうかの判断は都道府県が担うべきと考えてよいのではないか。個人情報保護法・条例との整合性も含め、議論を詰めておく必要がある。

 全国知事会は氏名公表の統一基準の策定を国に求める方針だが、住民に関する情報を最も把握しているのは自治体だ。都道府県と市町村は課題を出し合い、現実に即した基準作りを主導してほしい。