祖父が残した資料を基に、ヴォーリズとその「共鳴者」の軌跡をまとめた吉田さん(大津市・県庁)

祖父が残した資料を基に、ヴォーリズとその「共鳴者」の軌跡をまとめた吉田さん(大津市・県庁)

 建築家で教育者のウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)が手掛けた「吉田家住宅」(近江八幡市、国登録有形文化財)で生まれ育った男性が、ヴォーリズと生涯を共にした祖父の日記や写真を基に「信仰と建築の冒険-ヴォーリズと共鳴者たちの軌跡-」を刊行した。「無一文の英語教師だったメレルが60人からなる伝導団体を確立させた劇的な15年を明らかにできた」と話す。

 会社役員吉田与志也さん(65)。祖父の悦蔵さん(1890~1942年)は、県立商業学校(現県立八幡商業高)に英語教師として赴任したヴォーリズの最初の教え子で、キリスト教伝道団体「近江ミッション」(後の近江兄弟社)に携わり、日記や手紙を大量に残した。23(大正12)年にはヴォーリズと協力者の伝記「近江の兄弟」を書いている。

 信仰と建築の冒険|で、吉田さんは、ヴォーリズ来日1年目の05(明治38)年から近江ミッションを確立させた20(大正9)年までを時系列で記した。ヴォーリズが放課後に開いたバイブルクラスが盛況でキリスト教入信者が相次ぎ、2年で教師の職を解かれたいきさつや、悦蔵さんらと湖西・湖東の村を徒歩で巡った宗教生活調査、資金づくりのために始めた建築設計の評判などを丹念に描き、100年前の近江八幡で行われたハロウィーンなど県内の出来事を盛り込んだ。ヴォーリズの設計による建築や図面などの写真205点も載せた。

 8年前に実家の資料整理を始めたことが、出版のきっかけになった。「これまで情報の少なかった来日当初のエピソードや写真を数多く掲載できた。ヴォーリズ建築のファンや滋賀の近代史に興味がある人に読んでほしい」と話している。

 サンライズ出版刊、四六判455ページ。3024円。同出版0749(22)0627。(岡本早苗)