再審開始の扉の重さが再び浮き彫りになった。

 1979年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった大崎事件の第3次再審請求審で、最高裁は殺人などの罪で懲役刑が確定し服役した元義姉原口アヤ子さん(92)の請求を認めない決定をした。

 弁護側が提出した死因鑑定の信用性を否定した上で、再審を認めた鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部の決定を取り消した。

 再審請求の判断枠組みを示した75年の「白鳥決定」以降、地裁、高裁段階の再審開始決定を最高裁が取り消すのは初めてだ。司法関係者から「異例の決定」との声が上がったのも当然だろう。

 事故死の可能性を指摘した鑑定に対し、最高裁は遺体が腐敗していたことや、鑑定人が遺体を直接見ていないことから証明力には限界があると厳格に判断した。

 一方で、共犯とされた元夫らの供述が変遷していることなどには踏み込まずに「自白の信用性は相応に強固なもの」と評価した。

 「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則から、有罪とするのに疑問があれば再審を開始できるとした「白鳥決定」を逸脱しないか、疑問が残る。

 近年、科学的証拠に基づいて自白の信用性が否定され、再審無罪の確定が相次いでいる。

 刑事訴訟法は再審開始の要件を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見した場合」と定めるが、決定的な物証がなくても開始を認めるケースが目立つ。

 背景には、裁判員制度の導入や取り調べ可視化などの動きに影響された裁判所の意識の変化もあるのだろう。

 「疑わしきは―」に従い、市民の常識に照らして疑問が残っていないかを検討する姿勢が反映されるようになった。再審のハードルが下がったとの見方もあった。

 だが今回の決定は、そうではないと言っているようだ。

 再審の門戸を再び狭めることになりかねず、他の事件への影響が懸念される。

 原口さんの逮捕から実に40年となる。再審を巡っては、証拠開示について規定がなく裁判所の裁量に委ねられていることなどに対し、法整備を求める声が上がっている。

 そもそも裁判のやり直しの判断を同じ裁判所がすることに問題はないか。独立の再審委員会を設ける英国のような例もある。

 再審開始の基準も含めて「疑わしきは―」の原則が徹底される制度の在り方を議論すべきだ。