利用客らと談笑する野谷さん(右奥)=大津市膳所1丁目・ほうほうの森

利用客らと談笑する野谷さん(右奥)=大津市膳所1丁目・ほうほうの森

 交通事故で幼い長男を亡くしショックで難聴になった女性が、大津市膳所1丁目に多目的スペース「ほうほうの森」をオープンした。病気や自責の念から引きこもりがちになった経験を持つ女性は「さまざまな悩みや苦しみを持つ人が気軽に立ち寄って語り合い、落ち着ける場所にしたい」と話している。

 同市に住む野谷容子さん(62)。1997年11月8日の夕方、犬の散歩中だった長男大知君=当時(9)=が、自宅近くの横断歩道でダンプカーにはねられて亡くなった。

 「カメラを向けたら変な顔をするおちゃめな子だった。一緒に出掛けていれば、止めていれば、と何度も考えた」。大知君の同級生や知人に会うのがつらく、引きこもりがちになった。耳が聞こえづらくなり、事故から2年後に感音性難聴と診断された。

 「交通事故遺族は難聴の苦しみを知らないし、難聴の人には遺族の気持ちは分からない。全ての苦悩を理解してくれる人はいない」。口の粘膜や皮膚などが炎症を起こす難病「ベーチェット病」を患っていたこともあり、孤独感に襲われた。一方、「さまざまな悩みや苦しみを持つ人が集える場所を作りたい」と思うようになった。

 気持ちの整理がついた2年ほど前から場所を探し、昨夏に閉店した店舗を見つけた。スペースの名称は、大知君が楽しいときに発する口癖「ほうほう」から取った。

 コーヒーや軽食などを提供し、4月には障害を抱える画家による個展も開催した。今後はオーガニック食材を使った食事を出し、サークル活動への貸し出しなども予定する。

 野谷さんは「障害者や近隣住民など、いろいろな人に訪れてもらい、心休まるスポットにしたい」と話す。