深刻な偏見や差別に苦しみ続けてきただけに朗報に違いない。

 ハンセン病患者の隔離政策によって元患者の家族も平穏に暮らす権利が侵害されたとして国に損害賠償と謝罪を求めた訴訟で、熊本地裁はきのう、国の責任を認め、総額3億7千万円の賠償を命じた。

 訴訟では今もなお社会にはびこる偏見や差別の根深さが浮き彫りにされた。名誉回復を求める切実な声に、司法が救済の手を差し伸べた画期的な判決といえよう。

 元患者の家族が起こした初の集団訴訟で、京都府在住の7人を含め全国の家族561人が国を相手取り、提訴していた。

 元患者たちのハンセン病国家賠償請求訴訟で、熊本地裁は2001年、らい予防法に基づく療養所への隔離収容政策を違憲と断じ、国に約18億2千万円の賠償を命じる判決を言い渡した。国は政治判断で控訴せず、ハンセン病問題の全面解決を誓った。補償金支給法施行などで一定の解決に向かったとはいえ、家族の被害については一切顧みられなかった。

 熊本地裁判決は、国のハンセン病患者隔離政策によって患者だけでなく家族も差別を受け、家族関係の形成を阻害されたと認めた。さらに歴代の厚相が隔離政策を廃止しなかったことなどを違法とした。妥当な判断であろう。

 原告らは法廷で、さまざまな苦労を背負い続けた人生を語った。隔離政策により偏見、差別が助長され、患者の家族であることさえ隠して生きざるを得なかった人も多い。「隔離政策の名で家族を引き裂いた。責任は誰が取ってくれるのか」との訴えは胸に迫る。

 原告の多くが実名を出すと親戚に迷惑がかかると案じ、匿名で裁判に臨んだのは偏見や差別の強さの証左でもある。

 国はこれ以上、責任を回避すべきではない。01年の判決時と同様に控訴を断念し、苦難を強いられた家族に速やかに謝罪して、救済の手を差し伸べる必要がある。

 訴訟は隔離政策によってハンセン病を「恐ろしい伝染病」と誤認させた国の責任と併せ、偏見や差別を許してきた日本社会の責任をも問うたといえる。医師らは隔離の必要がない患者を見捨て、学校も偏見に苦しむ患者の子どもを助けなかった。司法もマスメディアも人権侵害を看過してしまった事実は重い。猛省せねばなるまい。

 ハンセン病問題は解決済みと考えがちだが、決して過去のものではない。差別を根絶するには何が必要か、判決から読み取りたい。