世界各国の首脳たちが、米国と中国の貿易摩擦を不安視している。そんな現実がにじみ出たような首脳宣言ではないか。

 大阪市での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は米中摩擦による世界経済の減速に懸念を示し、「自由、公正、無差別な貿易・投資環境の実現」を明記した首脳宣言を採択して閉幕した。

 高い関税をかけて輸入を制限しようとする米国と、不公正な貿易慣行が指摘される中国の両方をけん制するような内容だ。

 一方で「保護主義と闘う」などの文言は、昨年の首脳宣言に引き続いて盛り込まれなかった。米国の主張に配慮したとみられる。

 気候変動対策を巡っては、パリ協定からの離脱を表明している米国とその他の国々で一致した姿勢を示せなかった。米国とこれに配慮する日本の姿勢に欧州各国が猛反発するなど、合意形成は難航した。

 議長の安倍晋三首相は「意見対立でなく、共通点に光をあてた」と述べた。裏返せば、立場の隔たりが大きい論点での対立を避けたともいえる。

 G20はもともと自由貿易を守ることを旗印に掲げてきたが、「米国第一」を掲げるトランプ大統領の登場後は米国に振り回され、多国間で協調する体制は形骸化しつつある。議長国の日本がこうした現状を克服できなかったことは残念だ。

 それでも、利害が異なる先進国と新興国を含め、幅広い国のリーダーが集うG20の政治的な重要性は変わらない。合わせて行われた多くの二国間会談がそれを象徴している。

 特にトランプ氏と中国の習近平国家主席の会談では、貿易協議を継続することで合意し、世界を安堵(あんど)させた。

 トランプ氏が表明していた3千億ドル(約32兆円)分の中国製品に最大25%の関税をかける措置は当面先送りとなり、交渉の決裂は避けられた形だ。

 だが、先送りは「一時休戦」にすぎない。知的財産権や技術移転強制など米国が批判している構造的な問題を解決する糸口が見つかったわけではない。

 何より、昨年7月以来、両国が3段階にわたって発動してきた制裁関税は維持される。今後、どのような方法で協議を続けていくかは見通せない。

 対立の背景には安全保障上の理由もあり、国家の威信がかかわる。しかし、二つの大国による制裁の応酬が世界経済を冷え込ませていることを、両国は自覚すべきである。

 米中の対立は、G20で合意した国際的なデータ流通に向けた交渉枠組み「大阪トラック」創設を巡っても表面化した。

 貿易だけでなく、さまざまな国際合意の行方にも暗い影を落とすことがないか気がかりだ。

 両国の亀裂を包み込み、摩擦を減らしていくことが必要ではないか。それには多くの国々の関与が欠かせない。

 G20の限界が指摘されているのとは裏腹に、国際社会には結束と柔軟性が求められているように思える。

 多国間の意見調整や合意形成に向け、日本が果たせることはあるはずだ。