運転免許証の自主返納者に対し、木津川市が交付する市コミュニティバス1日フリー乗車券(京都府木津川市木津)

運転免許証の自主返納者に対し、木津川市が交付する市コミュニティバス1日フリー乗車券(京都府木津川市木津)

運転免許証自主返納者への山城地域自治体の主な支援

運転免許証自主返納者への山城地域自治体の主な支援

 4月に東京・池袋で母子が車にはねられて死亡した事故のように、近年、高齢ドライバーによる危険運転が問題視され、高齢者が運転免許証を自主返納する動きが進んでいる。返納後の生活を支えようと、山城地域の多くの自治体では公共交通の利用促進といった支援制度を設ける。一方、交通基盤が脆弱(ぜいじゃく)な地域では、車を手放せば生活に大きな支障が出るとして返納のハードルは高い。

 5月に迎えた70歳の誕生日に運転免許証を自主返納した京都府木津川市木津の男性は、40代の時、車で直進中、右折車と衝突する事故を起こした。

 「それまでは事故なんて起こさないと思っていたが、誰にでも起こり得ることだと考えが変わった」。以後は無事故・無違反を続けてきたが、60歳を過ぎたあたりから体力面などで衰えを感じ、70歳を機に返納しようと考えていたという。

 返納の直前、東京・池袋の事故や、大津市で園児が死傷した事故が発生した。「事故は周りの人の人生も台無しにする。体がいうことをきかなくなる前に、返納した方が良い」。自身の決断はより強固なものとなった。

 ただ、自宅はバス停に近く、最寄り駅も徒歩圏内。車に乗る息子とも同居しており、「恵まれているから返納できた」とも思う。

 「高齢者は返納すべきという考えは分かるが、車が無くなれば生活が立ち行かなくなる」。買い物や老人会の会合など外出はいつも車を使う南山城村田山の男性(72)は悩ましい心情を打ち明ける。

 村内はバスも電車も本数が少なく、バス停や駅までが遠い家も多い。タクシー会社も近くにはなく、送迎を頼める子どもらが村外に出て暮らす家庭も少なくない。

 「村内は狭い道も多く、高齢ドライバーにとって危険性が高い」との認識もあるが、「返納は考えたことがない。社会基盤を整備しなくては、こうした田舎で返納は難しいのではないか」と話した。

■自治体が公共交通利用へ支援

 京都府の山城地域では12市町村のうち8市町が、高齢の自主返納者に支援制度を設けている。

 木津川市では2016年から65歳以上の返納者を対象に、市コミュニティーバスの1日フリー乗車券10枚を交付する。市は「今後、公共交通を利用してもらうためのお試しとして使ってもらいたい」とする。精華町や八幡市も同様にコミバスの乗車券を提供している。

 和束町では16年から奈良交通のプリペイドカード5700円分を渡し、路線バス利用を促している。町議会などでさらなる拡充を求める声もあり、今後の対応を検討する。

 城陽市では、「身分証明書が無くなるから返納したくない」というドライバーのために、75歳以上を対象に、身分証明に使える「運転経歴証明書」の交付手数料のほぼ全額を負担する。京田辺市も65歳以上を対象に同様の補助を行っている。

 このほか、久御山町や宇治田原町などではJR西日本が発行するIC乗車券「ICOCA(イコカ)」1枚3~5千円分を進呈する。宇治市、井手町、笠置町、南山城村では現在までに支援制度は設けていない。

 京都府警によると、運転免許証の自主返納者は年々増えている。65歳以上のドライバーのうち、昨年1年間に自主返納した人は、保有者の2・4%に当たる8429人で、2年前から約1800人増えた。これに伴い、各自治体の支援制度の利用者も増加傾向にある。