またも露骨なイスラエル寄り政策への転換である。

 トランプ米政権がイスラエルの占領地ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植活動を事実上容認した。

 ジュネーブ条約は占領地に自国民を移住させることを禁じる。米国もカーター政権下の国務省が「国際法に違反する」との見解を示し、国際社会とともにイスラエルに自制を求めてきた。

 だが、ポンペオ国務長官は「これまでの政策は機能せず、中東和平に貢献しなかった」と方針転換の理由を述べた。

 中東和平は、イスラエルと平和的に共存するパレスチナ国家を樹立する「2国家解決」しかないというのが国際的な合意だ。

 入植容認はその放棄に等しく、暴挙と言わざるを得ない。ただちに撤回するべきだ。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争で占領したヨルダン川西岸などにユダヤ人居住地域を建設し、入植活動を進めている。

 現在、西岸地区にはユダヤ人約40万人が入植し、パレスチナ人約280万人と暮らす。入植問題にどう対処するかは、和平交渉の大きな争点の一つだ。

 トランプ大統領の盟友であるイスラエルのネタニヤフ首相は、占領する西岸地区の全ての入植地を併合し、主権を拡大する考えを示している。

 米国の方針転換は、こうした強硬姿勢をあおりかねず、入植が拡大すればさらなる暴力的行為を誘発し、2014年以来途絶えている和平交渉の土台そのものを崩す恐れがある。

 国連安全保障理事会で米国を除く14カ国が入植容認に異を唱えたのは当然である。日本政府も再考を強く促すべきだ。

 トランプ政権は、これまでにもエルサレムをイスラエルの首都と認定したほか、イスラエルがシリアから奪って占領するゴラン高原の主権を認めるなど、極端なイスラエル寄り政策を続けてきた。

 一方、パレスチナに対しては、難民を救済する国連機関への資金拠出を中止するなど強硬な姿勢を取り続けている。

 来年の大統領選を見据え、自らの支持基盤である親イスラエルのキリスト教福音派にアピールする狙いがあるとみられるが、あまりにも身勝手が過ぎよう。

 トランプ政権はイスラエルの新政権発足後に新たな中東和平案を公表するというが、中立性を失った政権に和平をまとめる資格があるとは到底思えない。