サザンオールスターズのライブ会場には、ツアーのビジュアル看板も設置され、多くのファンが記念写真を撮っていた=5月26日、大阪市・大阪ドーム

サザンオールスターズのライブ会場には、ツアーのビジュアル看板も設置され、多くのファンが記念写真を撮っていた=5月26日、大阪市・大阪ドーム

 テレビの歌番組ではなかなか見られない。サザンオールスターズには、いろんな顔がある。「夏、海、サザン」と評される世間によく知られた面もあれば、月の裏側のように普段は目に付きにくい面もある。昨年デビュー40周年を迎えたサザンが3~6月に開いた全国ツアー。3時間半で36曲。40年で培った顔を、いろんな角度からぐるりと見せる温かなライブだった。

 昨年の紅白歌合戦で披露した「希望の轍(わだち)」「勝手にシンドバッド」はもちろん、「ミス・ブランニュー・デイ」「マンピーのG★SPOT」など、冒頭や終盤にヒット曲を連発。数万人の観客は総立ちの盛り上がりとなる。ただ、そればかりだと懐メロ大会になりかねない。今回は、中盤の選曲にこだわりを感じた。

 サザンのライブにはステージ横にスクリーンが設けられ、歌詞が表示される。昔ならカラオケのように大声で歌ってしまう人が多かったが、観客の多くも年を重ね、特に中盤は桑田佳祐(63)が歌に込めた言葉遊びを席に座りながらじっくり味わう人が増えている。

 今回の極め付きは「雅(みやび)」や「妖艶(ようえん)」な精神世界を浮き彫りにしたことだろう。中盤の「古戦場で濡れん坊は昭和のHero」から続く楽曲は、メディアで流れにくく、見過ごしがちなサザンの一面を掘り下げた。

 曲「ゆけ!力道山」では、戦後プロレスの力道山を「日本に愛と正義の蜃気楼(しんきろう)」と歌詞で表し、「雅や」と締める。続く曲「CRY 哀 CRY」では、前曲から言葉をつなぐように「雅(みやび)白(しろ)たへの|」と歌い出し、源氏物語のような恋情を古文調で描き出す。力道山と平安貴族を「雅」でつなげられる裾野の広さが、サザンの強みといえる。

 湘南や茅ヶ崎の印象が強いサザンだが、明らかに「和」を意識した流れもある。桑田と同い年で、同じ時期にがんになった歌舞伎俳優の十八世中村勘三郎が7年前に亡くなって以降、桑田は歌舞伎の見得(みえ)のポーズをライブ終盤に時折見せるようになった。互いにリスペクトした表現者を失い、感じるものがあるのか。

 サザンがデビューした1978年大みそか。「除夜の鐘コンサート」という催しでサザンが初めて“年越しライブ”に挑んだのは、京都の南座だった。定番の横浜アリーナもいいが、和を織り交ぜたライブを、そろそろ京都で見たい。=大阪ドームで5月26日、敬称略