東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機(宮城県)が、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で事実上、合格した。

 東北地方の太平洋沿岸では過去に地震や津波が繰り返され、今後の発生確率も非常に高い。再び巨大災害に見舞われた場合、本当に耐えられるのか、避難計画は万全か。再稼働へ一歩近づいたが、「想定外」の懸念を拭えない。

 女川原発は大震災の震源に最も近く、約13メートルの津波が押し寄せ、全3基が自動停止した。2号機は原子炉建屋地下が浸水し、外部電源は5回線のうち4回線まで停止して過酷事故に至る恐れもあったとみられている。

 審査は約6年かかった。東北電は津波対策として、国内の原発で最も高い29メートルの防潮堤の建設を進め、原子炉建屋の壁にできたひびの補修や耐震強化などの対策を講じた。安全対策費はおよそ3400億円にも膨らんだという。

 規制委はこうした安全対策が新規制基準に適合すると認める審査書案を了承し、意見公募を経て正式に決める。被災原発の合格は日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)に続き2基目となる。

 ただ審査に合格したとしても、原発への不安が解消されたわけではない。先の大震災が原発の「安全神話」を打ち砕いたように、あらゆる対策を尽くしても想定外の事態が生じると考え、再稼働に向き合わねばなるまい。

 とりわけ気掛かりなのは万一の際に住民が避難できるかだ。30キロ圏内の7市町を対象にした広域避難計画は実効性に疑問符が付く。

 地元住民らが県などに対し、再稼働の前提となる地元同意をしないよう求める仮処分を仙台地裁に申し立てたのも、懸念が根強いためだ。リアス海岸の地形で避難経路が限られる上、想定ルートでは渋滞が生じ、バスや入院患者の搬送先の確保も難しい―といった指摘にどう対応するのか。

 東北電が立地自治体の同意を得るには、再稼働への前のめりの姿勢を改め、住民の安全確保を第一に考えて説明を尽くさねばならない。

 先頃、訪日したローマ教皇フランシスコは原発の利用を戒めた。事故時に重大な被害を引き起こすとして「完全に安全が保証されるまでは利用すべきではない」という警告は傾聴に値する。

 日本列島は地震や津波から逃れられない。実際に甚大な被害を受け、今後の発生も想定せざるを得ない地域で、原発の再稼働を容認した規制委の責任は極めて重い。