希少な琵琶湖固有種のビワマス。滋賀県の醒井養鱒場は新たな養殖手法を導入した(滋賀県提供)

希少な琵琶湖固有種のビワマス。滋賀県の醒井養鱒場は新たな養殖手法を導入した(滋賀県提供)

 「琵琶湖の宝石」とも呼ばれるビワマスの養殖を拡大しようと、滋賀県の醒井養鱒(ようそん)場(米原市)が、成長が早く育てやすい養殖品種「全雌(ぜんめす)二倍体」ビワマスの稚魚生産を始めた。琵琶湖固有種で上品な脂が美味なビワマスは料理店などから注文が多いが、天然、養殖ともに出荷量が少ない。新たな養殖法で「年間を通じた出荷や増産が期待できる」としている。

 全雌二倍体化は魚を全てメスにする技術で、ニジマス養殖などにも使われている。メスに雄性ホルモンを摂取させて「偽オス」とし、他のメスと交配させ、生まれる。同養鱒場は2012年、二倍体を改良した「全雌三倍体」ビワマスの稚魚生産を本格的に開始。県内の養殖業者が購入して成魚に育ててきた。業者の市場への出荷量はまだ少なく、17年は約19トンだった。

 両品種は長所と短所が真逆だ。二倍体はオスより気性がおとなしく成長が早いが、産卵期の秋には脂分が抜けて味が落ちてしまう。三倍体は卵を産まず、年中肉質が安定するが、成長は鈍いという。

 県水産試験場(彦根市)は、この両品種を一緒に養殖すれば、双方の「弱点」を補い合え、安定した出荷につなげられると考え、17~18年度に飼育実験を行った。同じ条件で育てた稚魚100尾を比べたところ、二倍体は、三倍体より約3カ月早い1年8カ月で刺し身用の大型魚(700グラム)に育つことが分かった。

 このため、二倍体を産卵前に出荷し、その後に成長が追いつく三倍体を出す「二段階出荷」をすれば、年間を通じて料理店などに提供できるようになると判断。昨年12月に水産庁から養殖に必要な確認を受け、醒井養鱒場が二倍体の生産を開始した。今年3月には、重さ75キロ分の稚魚を業者に初めて販売した。来春から産卵前の夏までが食べ頃になると見込む。

 天然ビワマスは漁師が取りやすい時期が夏に限られるといい、16年の漁獲量は36トンと少なく、例年、希少な存在だ。醒井養鱒場の岩﨑治臣場長(74)は「二倍体の導入で業者の安定経営につながり、生産量も高まると期待している。消費者が口にできる機会も増えるのでは」と話している。