門川大作市長

門川大作市長

 観光客の急増がまちづくりを問い直す事態に、どう対応するか。京都市の門川大作市長に、観光行政の課題に対する考えと今後の市政の方向性を聞いた。

 -観光客の急増で、観光消費額が伸び続ける半面、市民生活に悪影響が出ている。

 「観光消費額は市民の総消費支出額の53%に相当しており、京都経済に好影響を与えている。ただ、京都市は観光都市ではない。社寺や文化芸術などが観光客から評価されており、持続可能な魅力ある都市であり続けるために、市民生活と観光との調和をより一層重視する。立ち上げたプロジェクトチームで成果と課題を検証していきたい」

 「特定の場所への観光客の集中は悪化しているが、奥嵯峨や高雄、山科といった周辺部はすいている。市域全体が混雑しているとの誤解がある。周辺部の魅力の発信に力を入れたい」

 -観光消費額が伸びたといっても、市民にはあまり実感がない。

 「地下鉄と市バスで通勤定期が増えているのは、経済の活性化に伴い、常時雇用が増えているためだ。観光客がいなければ、地下鉄や市バスの路線を維持できないという事実を、知ってもらう必要がある」

 -5月の市議会で「宿泊施設数は満たされつつある」との認識を表明した。市中心部にはこれ以上、不要という意味か。

 「市中心部に宿泊施設が急増し、オフィスビルや若者が住める住宅が不足している。ただ、(宿泊施設の進出を)法的に規制しようとしても時間がかかる。地区計画も住民主体でなければならず、手続きは簡単ではない。周辺地域への高品質な宿泊施設の誘致を進めていきたい」

 -高品質とは何か。記者会見などで「富裕層向けのホテルが足りない」と繰り返してきた。

 「『高品質イコール富裕層向け』ではない。地域との調和や文化の継承、障害者の雇用など高品質の条件はさまざまある。ただ、五つ星のホテルはニューヨーク43、パリ61に対し、京都市は3だ。観光消費額を考えれば富裕層向けのホテルはもっと必要だ」

 -市の厳しい民泊規制の一方、簡易宿所は急増した。供給過多で廃業も増えている。

 「徹底した取り締まりの結果、違法民泊は約2500件から28件に激減した。簡易宿所の廃業は、淘汰(とうた)されているということだろう。前回市長選で選挙事務所に使った建物はカプセルホテルになってしまったが、同じ簡易宿所でも、町家を生かし地域と調和した質の高い宿もある。京都らしくないものは撤退してほしい」

 -政府は観光を成長産業と位置付けてアクセルを踏むが、どう評価するか。

 「民泊新法が成立する前、国に対して地域の理念に基づく独自の規制を可能にするよう求めてきたが、集合住宅や住居専用地域の民泊使用禁止など多くが受け入れられなかった。法律の見直しの際には改めて要望したい」

 -観光産業は水物で、東京五輪後に観光客ががくんと減った場合、宿泊施設は余り、宿泊税は減る。

 「観光客が増えているのは東京五輪の影響ではないというのが、多くの専門家の意見だ。ワールドマスターズゲームズや大阪万博など、観光振興が継続していく条件はある。観光産業が水物なのは事実だが、観光振興は平和の証しだ。豊かな暮らしや文化につながることを市民に実感してもらえるようにしたい」