参院選が、きょう公示される。

 先月の通常国会閉幕からわずか8日間で選挙戦がスタートする。異例の短期戦だ。

 慌ただしさもあるのだろうか、有権者はどこか冷めている。共同通信の調査では、選挙に関心を持つ人は約6割。3年前の参院選に比べて10ポイント近く下回っている。

 今後の国政の方向性を決める重要な選挙であることは間違いない。だが、何を問う選挙なのか、焦点が定まらない。

 各党の公約からもインパクトの強い主張はうかがえない。有権者の審判に対して、政党の腰が引けているような印象だ。

 これでは説得力のある訴えはできまい。一票を投じる側も判断に迷うばかりだろう。

 とはいえ、参院選は政権に対する中間評価の意味合いがある。6年半にわたる安倍晋三政権について審判を下す機会である。

 「安倍1強」政治の継続を望むのか、野党勢力の伸長で国会に緊張感をもたらすのか。まず、それが問われよう。政党や候補者の主張を吟味し、よりよい選択につなげなければならない。

■国会の監視機能低下

 そのために、国会議員の役割について考えたい。通常国会では、立法府が議論の場であることを疑わせるような光景が目についた。

 政府・与党は本年度予算が成立すると、衆参とも数カ月にわたり予算委員会の開催を拒み続けた。

 野党の見せ場を減らし、審議を無難に乗り切る意図があったことは明らかだ。野党も与党サイドからの「解散風」に浮き足立ち、議論を深める余裕を失った。

 象徴的だったのは、老後に2千万円の蓄えが必要だとする金融庁金融審議会の報告書を政府が受け取らず、与党も議論を封じ込めたことだ。退職後に不安を持つ人たちから強い批判の声が上がった。

 不都合な事実を黙殺して批判をかわそうとする政府と、これに追随する与党の姿が浮かび上がる。国会がチェック機能を果たさず、単なる採決機関になっていることを示してしまったようなものだ。

 財務省の文書改ざんなどの不祥事が相次いだ昨年の通常国会後、衆院議長が立法府の行政監視機能を検証するよう異例の所感を出した。その指摘を顧みず、反省もなかったと言われても仕方ない。

 野党にも、北方領土を戦争で取り戻すことの是非に言及して、糾弾決議をされた衆院議員がいた。

 国民の負託を受けている自覚をあまりに欠いている。

 国会の危機は民主主義を危うくする。議員の存在意義を問い直す選挙にしなければならない。

 有権者にはインターネットなど過去の発言や行動にアクセスする手段がある。候補者の資質を精査し、国政を託せる人を選びたい。

 日本の未来を左右する政策課題への対応も問われている。

 人口減少と少子高齢化は年々深刻さを増し、年金など社会保障の将来不安に拍車をかけている。金融審報告書に示された老後資金問題への答えをどう見つけるかは与野党ともに課せられたテーマだ。

■未来の姿誠実に語れ

 経済指標に悪化の兆しが見え始め、景気判断が引き下げられた。大企業と中小企業、正規従業員と非正規の格差の広がりを是正する方策についても検討が必要だ。

 10月からの消費増税は予定通り実施するというが、自民党は増収分の使い道を変更、野党は反増税で足並みをそろえる。だが、ともに財源確保や財政健全化への道筋は見通せていない。長期的な視点に立った政策と言えるだろうか。

 「今さえ良ければ…」というあからさまな本音が公約の裏側に透ければ、有権者は不安を増幅させることになろう。未来の姿を誠実に語る姿勢が必要ではないか。

 外交を巡っては、語られていないことが多すぎる。

 平和条約締結を巡るロシアとの交渉や、前提条件なしで日朝首脳会談を目指すとの主張は、外交方針の大きな転換だ。しかし、その理由は明らかにされていない。

 対米政策でも、安倍氏とトランプ大統領との親密さが今後の日米関係に及ぼす影響は、必ずしもプラスばかりとはいえまい。

 あらゆる政策に関して、「説明責任」という言葉が軽視されているのではないか。こんな状況で選挙を乗り切ろうというのは、国民に白紙委任を求めているのと同じだ。こうした手法も投票する際の判断材料となるに違いない。

■「良識の府」の自覚を

 引き続き、憲法改正の動きも注視したい。自民は公約の柱の一つと位置づけ、9条への自衛隊明記などを提示した。立憲民主党などの野党は批判の姿勢を強め、与党の公明党も9条改正には慎重だ。

 ただ、改憲の必要性について議論が熟しているとは言えず、国会での審議も進んでいない。

 改憲の国会発議に必要な3分の2の勢力が維持されるかどうかが今後の議論の鍵を握る。

 参院は「良識の府」であることが期待されている。議員がその自覚を持つことはもちろんだが、私たちも、国の最高法規を変更するかどうかを委ねるに足る政党や候補者かどうか十分に見極めたい。