被害後も続く苦しみについて語る遺族ら(大阪市西区・区民センター)

被害後も続く苦しみについて語る遺族ら(大阪市西区・区民センター)

  少年院や少年刑務所で教育を受けているのに、加害少年から被害者に謝罪がないのはなぜかー。未成年者らが起こした犯罪で子どもを失った親たちでつくる「少年犯罪被害当事者の会」がこのほど、大阪市西区でシンポジウムを開き、加害者に対する矯正教育の在り方や更生について話し合った。国が少年法適用年齢の18歳引き下げを検討する中、引き下げの是非についても弁護士と意見を交わした。11月25日~12月1日は犯罪被害者週間。

 シンポでは、加害者から謝罪や民事裁判の損害賠償金の支払いがないことから、被害後も遺族が苦しみ続けている現状が語られた。
 2008年、次男=当時(24)=が、見ず知らずの少年=当時(19)=が運転する軽トラックにはねられ死亡した千葉県の澤田美代子さん(63)は「謝罪がないばかりか、新たな被害者が出ないか恐怖がある」と打ち明けた。刑事裁判で加害者は「知らない人だから殺してもいいと思った。自分は少年だから死刑にはならない」と言い放ち、懲役5~10年の不定期刑になった。
 澤田さん家族は、加害者の受刑態度を知ることができる被害者通知制度を利用し、半年ごとに書面を受け取った。加害者は、被害者の心情を考える教育を受けていたにも関わらず、年月を追うごとに評価が悪化し、5段階評価の最低ランクで出所した。「なぜ少しも良くならないのだろうと疑問に思い続けた。個々の特性にあった矯正教育をしてほしい」
 06年、長女=当時(13)=を15歳だった少年に殺された岐阜県の清水恵子さん(54)は、少年院にいる加害者が「人生かけて、謝罪の気持ちを忘れず、賠償責任も果たしていく」という手紙を送ってきたと明かした。しかし出院後、2度の再犯をし、賠償金の支払いもない。「謝罪の手紙なんて意味がない。反省は全く感じられない」と憤った。
 加害者6人から賠償金の支払いを受けている小木法子さん(61)=浜松市=は、「15年以上の間、督促状を100枚以上送った」と打ち明けた。20年前、15歳だった長男を集団暴行で亡くした。民事の後、支払いが2カ月滞るたびに、督促のはがきを送り続けたという。母親は「ただのお金ではなく、息子の命そのもの。命を奪った責任を取らせたいという一心だった」と言葉を振り絞った。

■少年法適用引き下げ、賛否入り混じる

「加害少年たちは自分たちが少年法で守られていることを知っている。引き下げは抑止力になる」。1996年、集団暴行で長男=当時(16)=を亡くした当事者の会の武るり子代表は引き下げに賛意を示した。
 事件では、加害少年の名前も家庭裁判所の日程も教えてもらえなかった。「戦後すぐにできた少年法が時代に合っておらず理不尽すぎる」として、会を設立して改正を求めて活動を続けた結果、少年法は4度改正された。「時代の流れで、18、19歳が選挙権を持ち、大人として扱われるようになるのだから、当然、少年法も合わせるべき」と強調した。
 選挙権年齢引き下げや民法改正を受け、国は少年法の適用年齢も18歳未満に引き下げるか否か、現在、法制審議会で議論を進めている。加害者の矯正教育も課題に挙げられいる。
 一方、非行少年の更生支援を20年以上続けてきた神奈川県弁護士会の山崎健一弁護士は反対の立場を取る。重大な犯罪を犯す子ほど、家庭環境に課題があり、自己肯定感や他人への共感性が乏しいとする。生育歴なども調査した上で処遇する少年法の制度は有効とし、「18、19歳にも手厚く施し、再犯を防ぐ方が国としてもいいのではないか」と訴えた。

■泣き寝入りの現実、賠償金立て替えは

 当事者の会は、国が賠償金を立て替えた上で、加害者の財産を差し押さえて取り立てる制度の創設を望んでいる。
 スウェーデンやノルウェーではすでに導入されており、国内では兵庫県明石市が、2011年に犯罪被害者支援条例を制定し、300万円を上限とする賠償金の立て替え制度を作った。来年4月からは、市が代行して加害者から預貯金や給与を差し押さえて取り立てる制度も施行する計画がある。ただ、こういった制度を持つのは明石市のみで、多くの被害者が泣き寝入りしている現実がある。
 武代表は、「遺族がなぜ、何重にも苦しまなくてはならないのか。国は遺族の苦しみから目を背けず、賠償金の一部でもいいから立て替えてほしい」と訴えた。