京都市の山科盆地の西側、山上の樹木の間から銀色の二つのドームがのぞく。京都大の花山天文台だ。今秋に開設90年を迎えた▼明治時代に京大構内に天文台が設けられたが、都市化で1929年に花山山の山頂に移された。当時の新聞に「名所」との見出しが躍り、2年後の一般公開に5千人が押し寄せたという▼日本最初の天文愛好家団体の事務局が置かれ「アマチュア天文学の聖地」と呼ばれる。近くの小学校の校歌に歌われ、手塚治虫さんの漫画に登場した。火星や太陽の観測などで功績を残したが、別の場所に天文台が建設されると運営費の捻出が厳しくなり存続の危機が続く▼「次代に残さないといけない」。前台長の柴田一成教授は力説する。99年に京大に赴任した時に企画した一般公開。参加者の「子どもの頃から来ることが夢だった」という声に驚き、歴史を調べて価値を知った▼その後は観望会を定期的に開き、多くの人に知ってもらうため音楽イベントなどにも力を入れる。シンセサイザー奏者の喜多郎さんら著名人も応援に加わり、企業から10年間で1億円の寄付を受けることもできた▼しかし国の予算獲得は厳しく歴史を刻んでいけるのか見通しは不透明だ。市の「京都を彩る建物や庭園」に認定される「宝」だというのに気掛かりだ。