緑色の地にチョウをあしらったモダンなデザインのすずり箱。羽の表現にさまざまな技法が使われる

緑色の地にチョウをあしらったモダンなデザインのすずり箱。羽の表現にさまざまな技法が使われる

群生するカキツバタを描いた菓子盆。デザインは少しずつ違う。花びら部分の金色が盛り上がり、豪華な印象

群生するカキツバタを描いた菓子盆。デザインは少しずつ違う。花びら部分の金色が盛り上がり、豪華な印象

 尾形光琳が享保元(1716)年に没した後、世に琳派ブームが起こる。その波に乗るように光琳後継者を名乗り、活躍した蒔絵(まきえ)師がいた。永田友治(ゆうじ)。その名は当時の浮世草子に登場し、現在も蒔絵の手法で「友治上げ」という言葉が残るが、明治末には生没年も不確かになった。

 この謎の蒔絵師を個人研究家の岩井胤夫(つぎお)氏が丹念に追い、ミホミュージアム(甲賀市)での特別展に結実した。

 友治作品は緑や黄色など色漆を多用し、色彩感覚がモダンである。また「友治上げ」により模様の輪郭線などが盛り上がって見える。作品によっては金銀ではなく合金が使用されるのも特徴だ。

 友治の生きた時代は享保の改革で金銀の使用が制限され、倹約令で多くの豪商が没落した。蒔絵師にとっては金銀使いの豪華な作品が作れず、買い手も減る苦しい時代であった。

 友治の合金使用は金銀の代替手段だったと思われる。「友治上げ」も、従来手法より手間を短縮でき、コスト削減につながった。蒔絵師として生き残る道を模索した結果が作品に表れたとも言えるだろう。町方の芸術家ゆえの苦労だが、それは逆に作品に活気と魅力を与えてもいると感じた。15日まで。