期待された役割を果たせているとは言い難い。

 患者の予期せぬ死亡を対象とする「医療事故調査制度」の運用開始から4年がたった。

 医療機関が患者の死亡を事故として第三者機関「日本医療安全調査機構」(東京都)に届け出た件数は想定を下回り、死亡から最長で約2年半かかったケースもある。

 再発防止の目的に役立てられず、遺族が疑念を抱き続けることになりかねない。

 医療機関の判断に委ねられている届け出や調査報告の基準を明確化するよう見直すべきだ。

 制度は、相次ぐ医療事故への対処として医療法に規定し、2015年10月に始まった。手術や治療行為で予想外の死亡や死産があった場合、医療機関が第三者機関に届け出るとともに、自ら原因や経過を調査し、遺族にも結果を報告することを義務付けている。

 今年10月まで4年間の届け出は計1535件。当初は年1300~2千件が想定されていたが、毎年300件台にとどまっている。

 気になるのが届け出までの期間の長さだ。同機構が昨年分までの1234件を分析すると、半数以上は死亡から28日以内だったが、半年以上かかったのが69件、最長911日に上った。

 平均日数でも16年の36日から18年は71日へほぼ倍に延びている。遺族の求めに医療機関側がためらっている状況がうかがえる。

 時間がたつほど、関係者の記憶が薄れるなどして最終的な死因の究明が難しくなる恐れがある。

 医療機関の調査結果報告書は1件平均10・2ページだが、最少は1ページで、防止策の記載なしも少なくない。遺族への説明は、報告書の交付が努力規定とされているが、口頭のみが2割を超える。難解な医療用語を理解できるだろうか。

 制度の形骸化が進み、先細りする懸念が拭えない。

 大きな要因は、対象が「予期せぬ」死亡に限られ、その捉え方で医療団体ごとの指針がばらついていることだ。届け出=医療過誤と受け取られる訴訟リスクへの警戒心があるのは否めない。

 だが、制度は医療界全体で問題点を共有して再発を防ぎ、医療技術を進歩させるためのものだ。誠実な原因究明と説明こそ、信頼をつなぐことになるのではないか。

 届け出や調査、報告の基準を明示するとともに、中立的な立場で相談や助言、支援を担う「第三者」の機能強化や、専門的人材の育成、活用が重要だろう。