2020年度からの「大学入学共通テスト」で導入される英語の民間検定試験を巡り、対象試験の一つ「TOEIC」の参加を取り下げると運営団体が発表した。

 大学入試センターが参加を認めた8種類の試験で初の取り下げとなる。実施運営が想定より複雑になるため「責任を持って対応を進めることが困難」と判断したという。

 来春の民間試験スタートまで9カ月を切っており、受験準備への影響が心配だ。民間試験の導入は、実生活で使える英語力を目指す共通テストの目玉の改革だが、民間団体に実施を委ねる制度設計の弱みが露見したといえよう。

 民間試験には受験の機会や評価の公平性への懸念が根強くあり、大学の合否にどの程度影響するかも分かりにくい。そうした受験生の不安を拭う対策を急がなければ、大きな混乱を招きかねない。

 英語の民間試験は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測る目的で、TOEICや英検などが要件を満たすとして準備していた。

 参加を取り下げたTOEICの受験者の想定割合は約2%と低いが、共通テスト受験者約50万人のうち約1万人に当たる。目指していた受験生はショックだろう。

 TOEICは元々ビジネス向けの性格が強く、学習指導要領に準拠した試験ができるか疑問視されていた。運営団体は、2回に分けて行うテストの開催や成績報告が複雑になるのを理由に挙げたが、入試センターの要求に沿う大変さに受験者数が見合わないという判断があったのではないか。

 本番が近づく中、離脱した運営団体とともに、同センターと文部科学省の責任は免れない。導入案段階から、民間試験は家庭の経済状況や居住地域で受験機会に不公平が生じることや、異なる検定の得点を公正に比較できるかという懸念を教育現場は訴えてきた。だが、いまだ有効な対策を示せず、実施体制を固められていない。

 そのため各大学の民間試験の活用策も揺れている。文科省のまとめで、国立大全82校のうち京都工芸繊維大など3校は20年度の活用を見送り、他も出願資格にのみ利用から従来型のマーク式試験への加点まで大きく分かれる。私立大を含め未定も多く、受験生は志望校選びや対策に戸惑っている。

 文科省は20~23年度は従来型試験と併用し、24年度から民間試験への全面移行を予定するが、このまま「見切り発車」による混乱と不利益を受験生たちに負わせるのは避けねばならない。