イランが2015年の核合意で定められた濃度を超えるウラン濃縮作業を始めたと発表した。

 欧州などがイラン産原油の取引などを保証しなければ、60日後にさらに加速する方針だ。

 今月1日には低濃縮ウランの貯蔵量が合意の上限を超えた。

 イラン当局者は「欧州が米国の制裁からイランを守れば、今回の発表はなかった」と述べた。

 米国による制裁の再開で国内経済が急速に悪化する中、英仏独などに強く支援を迫った形だ。

 核合意を維持したい英仏独や国際社会に向けた「瀬戸際戦術」といえよう。かえってイランへの反発を招く行動ではないか。

 英独仏や欧州連合(EU)はイランへの批判や懸念を表明した。核合意の破綻と自らの孤立につながるような行動を、イランは控えるべきだ。

 核合意は、02年に秘密裏の核開発が発覚したイランが核開発の制限を受け入れる見返りに制裁を解除する内容で、イランは原油輸出などが可能になった。

 査察を続けている国際原子力機関(IAEA)は、イランの合意順守を確認していた。

 今回の事態の端緒は、合意から一方的に離脱した米国のトランプ政権にあることは確かだ。

 しかし、イランが再び核開発に突き進めば、イランに対する国際社会の理解や同情が失われることも、また確実ではないか。

 今月4日、制裁に反して石油を運んでいたとされるイランのタンカーが英領ジブラルタル当局に拿捕(だほ)された。イラン国内の対外強硬派は猛反発している。

 国際協調を重視する穏健派のさらなる求心力低下が懸念される。

 イランの今後の姿勢によっては、米国内に先制攻撃論が強まろう。周辺国も巻き込んだ軍事衝突が起きかねない深刻な事態だ。

 トランプ氏には、北朝鮮に圧力をかけ首脳間の非核化交渉を実現した「成功体験」が念頭にあるようだ。

 だが、韓国のような仲介者は見当たらない。米国に展望があるようには思えない。

 安倍晋三首相は先月、イランを訪問し、最高指導者ハメネイ師から核兵器を所有する意図がない旨の発言を引き出した。

 日本政府はイランに合意順守を改めて求めたが、米国にも緊張緩和を積極的に働きかけるべきだ。

 イラン核合意は多国間協調主義を具現化した成果である。崩壊はなんとしても避けてほしい。