Xバンドレーダーが配備されている米軍経ケ岬通信所。地元では発電機からの騒音が再び問題化している(2019年7月2日午前8時20分、京丹後市丹後町袖志)

Xバンドレーダーが配備されている米軍経ケ岬通信所。地元では発電機からの騒音が再び問題化している(2019年7月2日午前8時20分、京丹後市丹後町袖志)

 参院選では安倍政権の6年半をどう評価するかが問われる。年金や景気、憲法改正や教育…。争点となっている政策課題の現場を訪ねた。

■なし崩しに進む米軍従属

 「いろいろな約束が破られている。住民はどうすればいいのか」。ミサイル防衛用「Xバンドレーダー」を配備する米軍経ケ岬通信所。地元の京丹後市で6月29日にあった基地反対派の学習会で、市民団体「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」事務局長の永井友昭さん(62)が語気を強めた。

 永井さんが言う「約束破り」の一つが、米軍人や軍属らの絡んだ交通事故に関する情報開示だ。当初、防衛省は市や住民に、物損事故なども含めて発生日や場所、内容を報告していた。だが昨年2月の事故を最後に、市側へ一切知らせていなかったことが今年3月に判明。さらに防衛省は、悪質、重大な事故以外は件数報告のみとする姿勢に転じた。市も「一定理解できる」とし、全件の詳細報告を求めてきた従来の立場を事実上、覆した。

 6月の定例市議会では、保守系議員からも市の対応に批判が出た。米軍への従属がなし崩しで進んでいると、永井さんは危機感を募らせる。参院選では日米同盟の在り方や憲法改正の是非も問われるだけに、学習会に訪れた約50人に向け「基地問題を好転させるには、なんと言っても参院選だ」と訴えた。

■米軍と「共存共栄」地元の葛藤

 同通信所は、海に面した水田が「日本の棚田百選」に認定される同市丹後町袖志地区にある。青々と育つ稲穂を背に区長の松下敏さん(64)は切実な思いを語る。「市の最も端の集落で、これまでは置いてけぼり。衰退に歯止めをかけられるものは何もなかった」

 米軍基地は、そんな過疎地に大きな影響をもたらした。棚田への水路は野ざらしで維持管理が懸案だったが、米軍再編交付金で地中に用水管が整備された。集落には共同作業場や集会所もできた。昨年の台風被害では米軍関係者が復旧作業に駆けつけてくれた。今、基地では軍人が住む隊舎の建設が進む。「完成後に調理や清掃で雇用が生まれ、若者が集落に戻ってこられるようになれば」。松下さんの願いは、米軍との「共存共栄」だ。

 基地から車で30分ほど。米軍属の集合住宅がある同市網野町島津では、地元住民が秋祭りに向け、今や飾るだけとなった神輿を担いでほしいと、軍属たちに初めて依頼する予定だ。地域との距離を縮め、トラブルを回避するのが狙いだと住民組織の役員たちは言う。

 地元区長の谷口喜久治さん(71)に、米軍という存在の受け止め方を問うと、慎重な言葉が返ってきた。「個々人に恨みはない。だが、基地が攻撃対象になるという意見はある。根本的な抵抗感は変わらず、不安に思う人はいるだろう」

 基地用地を貸す地元地権者の妻は「表立って意見を言えば、地元で暮らしづらくなる。でも、安心安全を保障してもらうには、住民が声を上げないといけない」と葛藤を口にした。

 匿名が取材に応じる条件。指定された面会場所は自宅から離れた所だった。この女性は、東アジアを巡る国際情勢は楽観視できず、レーダーは必要と考えている。一方、地元以外の無関心も肌で感じている。同じ市内でも離れた地域の住民から、「お金をもらったらいいやん」と言われたという。「本土と沖縄の関係に通じている」

 集団的自衛権の行使は可能と憲法解釈を変更し、9条改正も目指す安倍政権の下、Xバンドレーダーの本格運用が始まって4年半余り。日米同盟の最前線となった府最北のまちは、今も揺れ続ける。