選挙事務所で有権者に電話で投票を依頼する支援者。つながったかどうかを記すメモには「留守」の文字が並ぶ(京都市内)

選挙事務所で有権者に電話で投票を依頼する支援者。つながったかどうかを記すメモには「留守」の文字が並ぶ(京都市内)

 選挙事務所のスタッフらが有権者に電話で投票を依頼する「電話作戦」が苦戦している。固定電話を持つ家庭が減少している上、相次ぐ特殊詐欺事件を背景に、知らない番号からの電話を取らない世帯が増加しているためだ。21日投開票の参院選でも京都選挙区の候補者の選対が「他のアプローチも考えなくては」と頭を悩ませている。

 9日午前、京都市内にある選挙事務所で、支援者の男性(79)が名簿を見ながら電話作戦を始めた。1軒、2軒、3軒…5軒目でようやくつながったと思いきや、留守番電話に切り替わった。「またか」。男性はメッセージを吹き込み、ため息をついて受話器を置いた。

 一軒一軒に電話し、候補者の理念や政策を直接訴える電話作戦は得票拡大に向けた伝統的な手段だ。だが、ここ数年、電話がつながらなかったり、常に留守電だったりする世帯が目立って増えたという。

 情報通信白書によると、全国の固定電話(IP電話除く)の契約数は2017年度、2135万件で、10年前から41%に減少。さらに参院選で複数の選対関係者が「原因」とみているのが、特殊詐欺グループなどが事前に資産状況を尋ねる「アポイントメント電話(アポ電)」だ。

 京都府警によると、府内で犯行グループからとみられるアポ電は昨年2418件あり、98%が固定電話にかかっていた。府警は詐欺被害に遭わないため、「着信音中は受話器を取らず、留守番電話のメッセージを聞いて相手を確認してからかけ直して」と呼び掛けている。録音機能付きの電話機の使用も推奨する。

 防犯対策が選挙運動に影響している状況について、府警の担当者は「政党がそんな悩みを持っているとは知らなかった。特殊詐欺に対する一般の人の意識がそれだけ高まったということだろう」とした上で、「選挙運動を阻害するつもりはない。特殊詐欺が相次ぐ中、対策を呼び掛けるのはやむを得ない」と理解を求める。

 各陣営は、発信元の電話番号を通知するため、相手の電話番号の前に「186」を押して架電したり、代替手段として会員制交流サイト(SNS)での情報発信に力を入れたりと試行錯誤を重ねる。

 ただ、SNS活用には懐疑的な声もある。京都選挙区のある選対幹部は「高齢者には電話でしかつながれない有権者がいるのも事実。会話の中で政治への期待や不満の声を聞くこともでき、SNSには替えられない面もある」と電話作戦にこだわりを見せる。