年金を頼りに一人で暮らす女性。老後の安心を実感できない日々が続く(京都府福知山市内)

年金を頼りに一人で暮らす女性。老後の安心を実感できない日々が続く(京都府福知山市内)

 また、断られた。「年齢不問って書いてあるのに」。京都府福知山市の女性(74)は電話を切って肩を落とした。求人情報誌で見つけた清掃のパートに応募したが、「その年で立ちっぱなしはしんどいやろう」と門前払い。調理や介護などさまざまな職を探すが、最近は年齢ではじかれてばかりだ。

 年金頼みの1人暮らしが続く。2カ月に1度、介護保険料が天引きされると手元に残るのは5万2千円。光熱費の支払いもままならず、近くに住む娘や親類の援助でしのぐが、やり切れない思いが胸に残る。

 30歳のときに夫が自死した。営んでいた飲食店を引き継ぎ、切り盛りしながら2人の子を育てる日々だったが、「国に勢いがあって、地域も人でにぎわっていた。老後はバラ色やと気楽に思ってた」。しかし、50歳手前で体調を崩して店を売却。数年前に両親も見送った。

 家族構成や働き方が変わる間、年金のことは深く気にしなかった。今になって支給額の少なさを疑問に思うが、「どこに何を聞けば良いかも、ややこしくて分からん」。制度の複雑さの前に立ちすくむ。

 年金への不満がくすぶる中、老後資金「2千万円」問題が起きた。金融庁報告書の受け取りを拒否し、「(私自身は)年金受給の記憶がない」とまで言い放った麻生太郎金融担当相の態度に、女性は「人ごとのよう。議員や官僚は国民の生活を知らない」と憤る。テレビで年金問題を目にすると不安がかき立てられるため、チャンネルを変えるようになった。「長生きの家系で、母は97歳まで生きた。でも私は長生きしたいとは思えない」

 暮らしの安心を求める声は世代を問わない。安倍政権は社会保障を高齢者重視から「全世代型」に転換すると打ち出したが、だれもが「人生100年」を不安なく見通せる社会には、ほど遠い。

 滋賀県栗東市の主婦奥村知子さん(42)は昨年、当時高校3年だった長男(19)と電卓をたたいて驚いた。長男が望む柔道整復師の専門学校に通うには、奨学金を利用すると利子の返済を含め550万円必要で、学資保険でためた250万円の倍以上になった。「返せるかな」。話し合いの末、長男は就職を選んだ。「親が借金をしてでも学校に行かせるべきだったか」との思いが頭をよぎった。

 奥村家は5人きょうだい。長男は2010年に導入された高校無償化の恩恵を受けたが、次女(8)と次男(5)の幼稚園費が重なり、夫の収入の半分を教育費に使った。今年10月からは幼児教育・保育無償化が始まる。知子さんは「親の収入による教育格差をなくせる」と政策の流れは歓迎するものの、次男が通う幼稚園は開園日数などの条件で無償化の対象外だ。

 漫画家、パン屋さん、電車の運転手…。子どもたちは口々に夢を語る。「子どもが増えれば喜びも増えるのに、教育費は不安でいっぱい」。おなかにいる6人目の子が成人を迎えるとき、知子さんは還暦を過ぎる。「教育費さえためられないのに、自分たちの老後までとても考えられない」

 今を生きる世代だけでなく、未来の担い手にも安心をもたらす給付と負担の姿をどう描くのか。責任ある政治の出番だ。

   ◇

参院選では安倍政権の6年半をどう評価するかが問われる。年金や景気、憲法改正や教育…。争点となっている政策課題の現場を訪ねる。