夏前にナスを食べると、秋ごろの味がした。冷夏になると予測し、寒さに強いヒエを植えるよう勧めたのは、江戸時代の農政家・二宮金次郎である。その後、天保(てんぽう)の飢饉(ききん)が起きたが、二宮の村は難を逃れた▼農家に生まれるも、度重なる川の氾濫で田畑を失う。身を寄せた家で嫌がられても勉強を続け、農村の復興に功績を残した。まきを背負って歩く際は、読書に励んだとされる▼その姿は銅像や石像になって各地の小学校に残る。別のことを行い「ながら」する作業が、戦前は勤勉さを表すとして尊ばれた。しかし戦後、テレビやラジオをつけたまま勉強する「ながら族」の若者が登場して様子が変わる▼車を走らせているのにスマートフォンや携帯電話を使う「ながら運転」まで現れた。死亡事故を起こした運転手には、スマホで漫画を読んだり、ゲームをしたりした者がいる。遺族の無念さは、計り知れない▼道路交通法の改正で、今月から厳罰化が施行された。違反点数と反則金が上がって懲役刑も重くなった。「ながら運転」をなくす契機としたい▼3年前、二宮ゆかりの栃木県日光市の小学校に、歩かずに座る像が設置された。寄贈した団体は「ながら行動を改めてもらう思いを込めた」と話す。二宮は分かっているだろう、社会にとっての損得を。