細かい文字で「自動的に有料掲載へと移行」と書かれた求人広告サイトの掲載申込書

細かい文字で「自動的に有料掲載へと移行」と書かれた求人広告サイトの掲載申込書

 インターネット上の求人広告サイトを巡り、求人情報を無料で掲載できると勧誘された事業者が、一定期間の利用後にサイト運営会社から高額な料金を請求されるトラブルが各地で相次いでいる。人手不足に悩む中小企業や個人事業主が標的になっており、支払いを拒んだ事業者側が訴えられたケースも出ている。悪質とみた京都や滋賀の弁護士が対策に乗り出した。

 「無料で求人を載せませんか」。滋賀県内でレストランを経営する40代の男性に横浜市のサイト運営会社から電話があったのは4月上旬。ハローワークに求人を出した直後だった。感じのいい若い男の声。申込書には「初回無料キャンペーン」とあり、料金がかからないとの契約内容を何度も確認し、翌日に申し込んだ。

 約3週間後、32万円超の請求書が届いた。慌てて問い合わせたが、会社側は「契約時に説明した。申込書にも書いてある」と主張。細かな文字が並ぶ書面に改めて目を通すと、「解約申し入れがない限り、自動的に有料掲載へと移行」とあった。その後、民事訴訟を起こすとの督促状も届いたが、支払いには応じていない。男性は「移行の話は全く聞いていない」とした上で、「無料の『お試しキャンペーン』自体は珍しくない。タダだから怪しいとは思わなかった」と振り返る。

 県内の福祉施設で採用を担当する男性は、同じサイト運営会社の移行措置の「落とし穴」に気づきながら解約が遅れ、約30万円を請求された。「1件でも応募があればと欲が出た。わらにもすがる思いにつけ込んで許せない」と憤る。取材に対し、同社の担当者は「移行措置については必ず説明しており、契約に問題はない。悪質な同業他社と混同されている」などと話した。

 同様のサイトで共通するのは、電話で掲載を持ちかけ、2~3週間後に数十万円を要求するというものだ。

 消費者問題に取り組む各地の弁護士と情報交換する高良祐之弁護士(沖縄弁護士会)によると、同様の求人サイトは約20サイト存在し、相談は年明けから急増。沖縄や鳥取両県でそれぞれ50件程度の相談が確認されており、全国での被害規模は2千件を超す可能性が高いという。松林慧弁護士(滋賀弁護士会)らによると、京滋でも飲食業者や建設業者などから被害相談が寄せられている。

 背景には、深刻な人手不足があるとみられる。求人情報会社でつくる全国求人情報協会(東京)の調べでは、紙媒体を含む求人関連市場は約8530億円(2017年度)で、企業の採用難を背景に前年度より576億円拡大した。高良弁護士は「ネット求人は元手がかからないため、手っ取り早くもうけたい業者が中小企業を狙っている」と警鐘を鳴らす。

 同情報協会は3月、無料掲載をうたう求人広告に注意し、高額請求に対しては弁護士に相談するよう加盟社に通知した。広島では弁護団が結成されたほか、鳥取県弁護士会は注意を呼び掛ける会長声明を発表。京都弁護士会が6月に実施した無料電話相談には、京都府内外から7件が寄せられたといい、京都、滋賀の両弁護士会は今後も相談に応じていくとしている。