園児死傷事故を受け、園児の散歩ルートを点検する近松保育園の保育士や大津市の職員ら(大津市浜大津2丁目)

園児死傷事故を受け、園児の散歩ルートを点検する近松保育園の保育士や大津市の職員ら(大津市浜大津2丁目)

 大津市で5月、散歩中の園児2人が死亡し、園児や保育士14人が重軽傷を負った事故を受け、参院選(21日投開票)に臨む各政党が、子どもの交通安全対策を公約に盛り込んでいる。国は、各都道府県や全国の保育園や幼稚園に、園児の散歩ルートを緊急点検するよう通知しており、対策は選挙後に本格化する見通しだ。幼い命を守るために何が必要か、保育士と現場を歩いた。

 「安心して歩ける道は本当に少ないですね」。公示前日の3日朝、近松保育園(大津市札の辻)の主任保育士森孝子さん(55)が、散歩道の脇を次々と通り過ぎる車を横目につぶやいた。この日は事故を受け、園と市が合同で安全点検を行った。

 歩いたのは、浜大津の琵琶湖岸に向かう京阪京津線の電車道沿いなど3ルートの計2キロ。交通量が多い中、約120人の園児が週に1、2度散歩に出掛ける。防護柵がなく幅の狭い歩道、歩道と車道が分離されていない路側帯…。「脇道から車が突然出てくる」「歩道を走る自転車も危ない」。森さんらは次々に危険箇所を挙げ、「お散歩は楽しいけれど、保育士は日々ハラハラしているんです」と打ち明けた。

 園は毎回散歩の計画書を作り、少なくとも保育士3人が引率するなど安全対策を練ってきた。ただ、羽栗周映園長(68)は「今回のような事故は保育園では防ぎようがない。交差点に車が進入できないよう対策を講じてほしいし、何よりも、運転手のモラルを高める取り組みが必要だ」と行政に対策を求めた。

 園児と保護者、保育士らが安心して歩ける道路環境を実現するため、政治はどんな方策を示すのか。参院選公約を見ると、各党は「学校や保育園の半径500メートルを速度抑制エリアに指定」「児童通学安全確保法を制定」などの政策を示している。

 国は園児事故から1カ月以上が過ぎた6月18日、全国の保育施設の散歩ルートを9月までに点検するよう都道府県に通知した。滋賀県は同月中旬、事故現場の丁字路に金属パイプの防護柵の設置を終えたが、現場以外で交通量の多い県道交差点572カ所で点検したところ、防護柵のない場所が7割を占め、潜在的な危険箇所がいかに多いかが浮き彫りになった。県の担当者は「財政的な問題もあり、全ての箇所に対策ができるかは決まっていない。国の財政支援がなければ難しい」とこぼす。

 大津市は、保育所周辺の道路でドライバーに注意喚起する「キッズゾーン」を今月から設置する。政府も全国で取り組む方針を決めており、近松保育園の森さんは「可能な限り早く、全ての保育園でキッズゾーンを導入してほしい」と望む。散歩ルート点検に同行した同園保育士の本多二三四さん(58)は「園の近くだけでなく、散歩道にも園児が歩く場所だとドライバーに伝わる表示がほしい」と提案。小中学校の通学路と同等の安全対策を願った。

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 大津市の事故で重傷を負った女児(3)の両親は、京都新聞社に寄せた書面の中で、行政に求める対策として、ドライバーの徹底した意識改革や適性能力検査、保育園と学校近くでの速度規制、防護柵の設置などを挙げた。

 文面には事故抑止への悲痛な思いをつづっている。「たとえどんな対策をしても、世の中から交通事故がなくなることはないと思う。ただ、不幸な事故が二度と起きないよう、十分な対策をしてほしい。命が失われてからでは遅すぎます」