みぞれ鍋を食べるたびに、思い出しては複雑な気持ちになります。

 「やっちゃん、ちょっと来とうみ」。家族の目を盗んで砂糖つぼを抱えた祖父が縁側でどら猫のように手招きしています。真っ白に積もった雪の表面をはらいのけ、なかのふんわりとしたところをそっとすくい器に盛り付けたかと思うと、あろうことか砂糖をパラパラとふりかけて「みぞれやで」とおもむろに私に食べさせました。

 戦前生まれの祖父です。その頃は良かったのでしょうが…。何も知らない私は目を輝かせ、こっそりおいしそうに祖父と2人、夢中で頰張っていると、ものすごい剣幕(けんまく)で両親から怒られました。それこそ首根っこをつかまれたどら猫のように、何もできないままおじけづいている祖父と私なのでした。

 それにしても、あのみぞれさえ食べていなければ、今では少しは分別のある女性になっていたのかしら、はたまた…と物思いにふける今日この頃です。


◆小平泰子 こひら・やすこ 1977年京都市生まれ。旬の食材を使い、和食にとらわれず、食材の組み合わせの面白さを提案したレシピを考案。中京区烏丸三条と東京・日本橋で料理教室を開く。近著に「季節の野菜と果物でかんたんおつまみ」がある。インスタグラムはyasukokohiragokan