あまりの惨劇に言葉を失う。犠牲になった多くの人のご冥福をお祈りしたい。

 宇治市に本社を置くアニメ製作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ(京都市伏見区)で火災があり、30人以上が死亡、多数の負傷者が出た。

 現場付近で確保された41歳の男は液体をまき、火を放ったと話しているという。

 京都府警は男が放火した疑いがあるとみて、負傷した男の回復を待って事情を聴く方針だ。

 「京アニ」の愛称で知られ、2000年代以降、「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」「けいおん!」など、いくつものヒット作や良作を世に送り出してきた人気スタジオである。

 多くのファンをとりこにした、魅力的なキャラクターや物語が生まれた場所だ。

 そこでなぜ、こんなことが起きたのか。詳しい状況はまだ不明だが、まるで大量殺人を狙ったテロ行為のようでもある。

 過去の放火殺人事件でも、これほど大きな被害が出た例は知らない。一つの会社が標的にされたとしたらそれも特異だ。

 府警の捜査を待たなければならないが、放火殺人とすればいったいどんな動機があったのか。徹底した解明が求められる。

 アニメは今や、日本が誇る文化だといわれる。

 放送中のNHK連続テレビ小説「なつぞら」の舞台は、その草分けであるスタジオ「東映動画」がモデルとされる。

 東映動画にいた宮崎駿さん、故高畑勲さんらのスタジオジブリ作品は世界中で人気を集める。京アニは、ファンにとってはジブリ以上の存在ともいわれる。

 1981年創業で、もとは仕上げの会社だったという。アニメ製作のデジタル化が進み、地方の落ち着いた環境の中で一貫した製作ができるようになった。

 地方発ながら「聖地巡礼」ブームを巻き起こし、主題歌などもヒットしている。地元にこうしたスタジオがあることを誇らしく思う人もいるに違いない。

 「映画のまち」京都は映像など優れた製作文化を紡いできた歴史がある。ファンに支持される京アニの丁寧な作画や演出は、そんな系譜をほうふつとさせるような質の高さが評判になってきた。

 それを支えてきた多くの人たちが犠牲になった。

 被害の全容はまだ明らかになっておらず、事件の影響の大きさは計り知れない。今は負傷者とスタジオの回復を祈るばかりだ。