ロールケーキにクリームを盛り付けるみずきさん(近江八幡市鷹飼町・滋賀県立男女共同参画センター)

ロールケーキにクリームを盛り付けるみずきさん(近江八幡市鷹飼町・滋賀県立男女共同参画センター)

みずきさんが作ったケーキなど色とりどりのお菓子が並ぶ会場(近江八幡市鷹飼町・県立男女共同参画センター)

みずきさんが作ったケーキなど色とりどりのお菓子が並ぶ会場(近江八幡市鷹飼町・県立男女共同参画センター)

みずきさんが自作のお菓子の写真を投稿しているインスタグラムのアカウント

みずきさんが自作のお菓子の写真を投稿しているインスタグラムのアカウント

 家族とは会話できるが、学校などでは話せなくなる「場面緘黙(かんもく)症」の少女が、パティシエを目指して菓子作りに取り組んでいる。月に1回、滋賀県近江八幡市内で開くカフェには色とりどりのケーキやクッキーが並び、客から好評だ。少女は自らの店を開く夢に向け、家族とともに資金を募り準備を進める。母親は「お菓子作りが、やりがいを感じることにつながってほしい」と応援する。

■不登校中のインスタ投稿が転機

 金田小6年の杉之原みずきさん(12)=同市上田町=が場面緘黙症と分かったのは、6歳の就学前診断のとき。母親の千里さん(46)は「自宅では家族と話せていたので全然気づかなかった」と振り返る。入学後、教室で声が出ず、極度の不安で体が動かなくなることもあった。4年生の一時期には不登校になった。
 転機は写真共有アプリ「インスタグラム」だった。不登校中に趣味で作った菓子の写真を投稿すると、「とってもオシャレ」などとコメントが相次いだ。反響に喜んだみずきさんはネットでレシピを調べ、さまざまな菓子作りに挑戦。レパートリーは100種類を超えた。
 「お菓子を売ってみたい」と、今年4月から毎月、1日限定のカフェ「みいちゃんのお菓子工房」を滋賀県立男女共同参画センター(同市鷹飼町)内で開く。評判を聞いて客が徐々に増え、完売する日も多い。10月にはハロウィーンにちなんだビュッフェ形式のスイーツカフェも企画。カボチャクリームのケーキや、おばけの顔をチョコペンで描いたクッキーなど10品余りを約20人が楽しんだ。
 カフェのファンで、東近江市の会社員中村晃さん(56)は「どのお菓子も食べるのがもったいないぐらいきれい。小学生が作ったとは思えない」と話す。
 来年1~2月、近江八幡市内で工房の開業を目指す。インターネットを介して資金を調達するクラウドファンディング(CF)で設備費の一部を募っている。目標額は300万円。協力者には、出資額に応じてカフェの招待券などを送るという。千里さんは「みずきと社会がつながる居場所になる。同じ生きづらさを抱えている人にも勇気を与えられればうれしい」と話す。
 22日、同センターで年内最後のカフェを開く。CFは来年1月13日まで実施し、インターネットサイト「Makuake(マクアケ)」から参加できる。

≪場面緘黙症≫

 不安障害の一つ。言語能力には問題がないにもかかわらず、学校や保育園など特定の状況では話すことができない。一般的に2~5歳で発症することが多く、原因は不明。有効な治療法は確立されていないが、早期に治療を行えば症状が改善される場合もある。保護者や周囲から内気や寡黙な性格と誤解され、症状が認知されていないケースもある。関西国際大教育学部の梶正義准教授らの研究によると、小学生の約500人に1人の割合でいるという。