「杜(もり)のスタジアム」をコンセプトにしたスポーツの「聖地」が、堂々たる姿を現した。

 先月末に完成した新国立競技場(東京都)である。2020年東京五輪・パラリンピックで、メイン会場となる。

 3年の工期を守り、1590億円とされた費用の上限を超えなかったのは評価されてよいだろう。

 アスリートたちのいわば晴れ舞台が整ったのだから、五輪の準備は来年7月の開幕に向けて、粛々と進めるだけだと感じられる。

 ところが、五輪に関連する最近の動きをよく眺めると、課題が多く残っている。

 大会のハイライトであるマラソンのコースが、いまだに確定していない。

 暑さ対策のため、会場を都内から札幌市に突然、変更することになった。選手のために早く決める必要があるのに、大会組織委員会が提示した市内を2周する案が、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で承認されなかった。

 1週目は組織委の提案通りに行われるが、残りの約22キロについては、7キロを3周する対案が出てきた。

 周回を増やして、給水所などの人員を効率よく配置したいのだろうが、変則的な設定で、コースを間違える要因ともなりかねない。関係者の賢明な対応を求めたい。

 また、マラソンに限らず、各競技の運営に目配りを続け、選手が遺憾なく力を発揮できる大会としてほしい。

 会計検査院が五輪の準備状況を調べたところ、18年度までに国が関連事業に支出した費用の総額が計約1兆600億円になったことが分かった。

 組織委が公表している大会に直接関係のある経費1兆3500億円や、都の関連費用を合わせると、総額が3兆円に達するのは確実とみられている。

 何を経費とするかによって、総額が異なってくるのは一定理解できる。

 とはいえ、日本での開催が決定する前に、招致委員会がIOCに提出した立候補ファイルで、総予算は7340億円とされていたことを、思い出してもらいたい。

 なぜ、これほど経費が膨張したのか、説明できるようにしておくべきだ。

 IOCや組織委は、コンパクトな五輪を目標としている。今後も、無駄なコストを削る努力を怠ってはならない。

 新国立競技場の件に戻ると、完成を喜んでばかりは、いられないという。大会後に、どう使うのかという大問題が残っているからだ。

 年間24億円が要るとされる維持管理に、公費が投じられることがないよう、民営化を目指す方針はあるものの、事業者の公募など具体的な計画は、大会後に先送りされてしまった。

 競技場の仕様を球技専用とするのか、陸上競技もできるようにするのかも、最終判断ができていない。

 大会が終わってから考えているようでは、巨額の経費が掛かる負のレガシー(遺産)とならないか、心配だ。