保育園で提供されている給食。実費となり負担を感じている保護者も多い(京都市内)

保育園で提供されている給食。実費となり負担を感じている保護者も多い(京都市内)

 10月から始まった幼児教育・保育の無償化に伴い、京都市内でもさまざまな影響が出ている。保護者が勤務時間の延長を申告して保育時間を延ばす事例が頻発し、保護者が支払う給食費を値上げする施設も出ている。無償化が必ずしも子どもの健全育成につながっていないとして、専門家は「子どもの保育と教育を最優先に考える制度であるべきだ」と警鐘を鳴らす。

 9月、市内の認定こども園の園長は、ある保護者が園に提出した書類を見て驚いた。10月1日から勤務時間が延びるという内容で、保育時間を現在の8時間から10時間に延長するよう希望していた。

 その保護者の勤め先は仲の良い友人が経営しており、園長は夫婦2人で平日の夕方に談笑したり、高級車を乗り回したりする光景を目撃していた。「本当にちゃんと勤務しているのか」。疑念は消えないが、直接聞けずに頭を悩ませる。

 保育関係者によると、無償化に合わせて勤務時間の延長を申告する例は、市内の複数の園で発生しているという。

 保育時間は8時間(短時間)と11時間(標準時間)がある。京都市では8時間以降は30分刻みで保育料を加算していたが、10月からはすべて無料になった。8時間保育の利用割合は他の政令指定都市と比べて高く、市幼保総合支援室は「保育時間の延長希望が増えれば保育士の負担が増す。本当に必要な場合に子どもを預けてほしい」と呼び掛ける。

 市内には保育園と認定こども園が計283施設(4月1日現在)ある。市によると、今のところは無償化の影響で市内で保育の申し込みが急増する動きはないという。ただ、無償化が勤務時間と保育時間の延長を招く傾向が強まれば、保育士の負担増だけでなく、「働き方改革」の流れにも逆行する。

 認定こども園協会京都府支部長で市日本保育協会の相談役も務める山手重信さんは「無償化は子育て世代の負担軽減が本来の目的だったはずで、本末転倒だ。無償化が働き方を含めたライフスタイルを見直すきっかけになればいいのだが…」と漏らす。

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 無償化は給食費にも影響を与えている。無償化対象の3歳児以上はこれまで、ごはんやパンなどの主食費を保護者の実費とし、おかずに当たる副食費は保育料に含めていた。10月からは保育料は無償化されたが、主食費と副食費はともに保護者の実費となった。金額は各園が決めている。

 伏見区の会社員女性(35)が長女を通わせている保育園は、2千円だった主食費を10月から3千円に引き上げた。保育料が無料のため、女性の負担は大きく減ったが、主食費の値上げには疑問が残っている。

 国は給食費の目安として主食費を3千円、副食費を4500円に設定しているが、市は実際にかかった費用に基づいて計算するよう各園に通達している。京都新聞社が各園の重要事項説明書を調べたところ、少なくとも18施設が主食費を値上げしていた。

 ある保育園の園長は「うちは食材にこだわっており、元々持ち出しがあったのを是正した」と話す。別の施設は「消費税増税に合わせた」とするが、食料品は軽減税率が適用されている。

 市幼保総合支援室は主食費の値上げについて「一つ一つ把握していないが、主食の内容が変わらないのに値上げすることは、あってはならない」としている。