英国による欧州連合(EU)からの離脱問題は、いっそう混迷が深まるのではないか。

 新しい英国の首相に、離脱強硬派のジョンソン氏が決まった。保守党党首選で穏健離脱派とされる対抗馬を大差で破っての選出だ。

 早速、「(期日通り)10月31日に離脱を実現する」と強調した。メイ前政権がまとめた離脱合意案の再交渉を模索する方針で、「合意なき離脱」も辞さない構えだ。

 ただ、EUは再交渉を否定しており、英下院議員の多くは「合意なき離脱」に反発している。

 メイ氏と同様、ジョンソン氏も八方ふさがりの状況は変わらず、事態打開は容易ではない。

 破天荒で予測不能な人物とも評されるジョンソン氏が選ばれた背景には、離脱問題の長期化に対する国民のいらだちがうかがえる。

 メイ氏はEUと交渉してまとめた合意案を英議会で3回も否決され、辞任に追い込まれた。

 同案には、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの自由往来維持のため、国境に税関を設けない代わりに英国をEUの関税同盟にとどめる内容が含まれる。強硬派は「英国が主権を取り戻せない」と猛反発していた。

 国境問題は、英国がアイルランドを植民地化した歴史的経緯もあり、慎重な対応が必要なはずだ。

 しかしジョンソン氏は、EUを説き伏せて解決策を見いだせると英メディアに語っている。離脱条件でEUとの合意がなくても離脱を遂げる姿勢を崩していない。

 「合意なき離脱」が現実になれば、英国にとどまらず世界経済にも大きな打撃となろう。そうした混乱を見越して、日系を含む多くの企業が拠点を英国外に移転させるなどの動きが広がっている。

 こうした影響を、ジョンソン氏はどこまで考慮しているのか。首相となる以上は、世界全体を視野に入れた対応が必要だ。

 英下院で離脱に関する意見は分かれたままで、保守党にも残留派がいる。合意なしに離脱に突き進めば身内の造反を招きかねない。

 議会構成を変えるため総選挙に踏み切るとの観測もあるが、保守党は5月の地方選で議席を3割も失う惨敗を喫したばかりだ。総選挙を強行すれば大敗する可能性が大きいとみられる。

 党内や国内の亀裂が混乱回避への建設的議論を難しくしている。

 ジョンソン氏は、首相就任から100日目に離脱期日を迎える。残された時間は多くない。何とか知恵を出してほしい。