樹液を求めて木の幹に群がるカブトムシやカナブン、スズメバチなど(大津市内)

樹液を求めて木の幹に群がるカブトムシやカナブン、スズメバチなど(大津市内)

 夏休み、かつて少年たちは、雑木林でカブトムシやクワガタムシをこぞって追い求めた。近年はホームセンターなどで「買うもの」として定着した感もあるが、今も「湖国」滋賀県の森には「夏の主役たち」の姿があるのだろうか。専門家と一緒に探しに行ってみた。

 7月初旬の朝、大津市の住宅街から徒歩5分ほど。甲虫の専門家「滋賀むしの会」の武田滋さん(69)の案内で雑木林に入った。樹液がしみ出した木に、カナブンやスズメバチの姿があった。夏の昆虫たちだ。しかし、カブトムシや大型のクワガタはいない。

 「カブトムシもクワガタも明らかに減っています」と武田さん。詳細な生息数調査はないが、30年ほど前の採集状況に比べ減少は顕著といい、「子どもが雑木林に行っても、なかなか見つけられないでしょう」と話す。

 生態に詳しい九州大大学院の荒谷邦雄教授(昆虫学)は、背景として温暖化と里山環境の変化を指摘する。生息地の雑木林で、シカが下草を食べ尽くし、温暖化と相まって土壌が高温かつ乾燥するようになり、幼虫が死んでしまう。また、人の手が入らなくなった里山で増えたイノシシが、土の中や朽ち木にいる幼虫を食べてしまうという。

 乱獲も問題だ。1990年代以降、「黒いダイヤ」と呼ばれたオオクワガタなどで、業者や一部マニアによる乱獲が相次いだ。成虫だけでなく、木を掘削して中の幼虫まで捕ってしまう。2年前にも野洲市の森で、多数の樹木が削り取られる被害が判明した。

 また、オオクワガタやヒラタクワガタは、外国産の近縁種や亜種が入り込んだ可能性がある。1999年の植物防疫法改正で外国産昆虫の輸入が緩和されて以降、湖国でも外国産のクワガタが発見された。外国産の種は、在来種と交雑したり生息を圧迫したりする恐れがあり、荒谷教授は「放虫は厳禁。クワガタは遺伝子に地域差があり、国内の旅先で捕まえた個体を放すのもいけない」とする。

 7月中旬、大津市の別の雑木林。夜8時に訪れると、大きい角のカブトムシが1匹。さらに上を見ると、同じ木に計7匹ものカブトムシがいた。クワガタも湖国には今も十数種が生息しているという。姿を減らしつつも、夏の主役たちはなんとか生き残っているようだ。