米中間の摩擦が、貿易分野にとどまらない可能性を示すものではないか。

 中国が、国防白書「新時代の中国国防」を4年ぶりに発表した。

 米国が軍備を拡張して、「世界の安定を損ねている」と名指しで指摘して、南シナ海の諸島と釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国側呼称)を固有の領土と主張した。

 今世紀半ばまでに、世界一流の軍隊をつくるのが目標だ。

 脅威の増大を、強く危惧しておきたい。

 前回の白書と比べ、米国への対抗意識を一層強めている。

 米政権による台湾への武器売却や、南シナ海での「航行の自由」作戦は、中国に対する挑発行為であると非難した。

 グアムの米軍基地を射程に収める中距離弾道ミサイルが、すでに配備されていると強調する。

 「遠海護衛」との表記を「遠海防衛」に改めた。東シナ海、南シナ海に加え、太平洋やインド洋などでの軍事行動を重視する姿勢をあらわにしている。

 中国は2015年末、陸海空軍の指揮系統を統合する大規模な組織改編に着手した。

 台湾近海に米軍が進出することを想定し、準備を進めている。上陸作戦に投入する海軍陸戦隊(海兵隊)を、艦隊などと同等の部隊に格上げした。

 野心的な方向に、傾いているのではないか。

 注目すべきは、ロシア軍との協力が、「世界の安定に重要な意義がある」としたことだ。

 島根県・竹島周辺で、中ロ軍機が領空侵犯したとされる問題で、中国国防省は、公海上空で初の合同パトロールを実施した、と発表した。

 今後、連携を深め、影響力を強めようとの意図は明らかだ。

 白書に対して、台湾は「軍拡を進め、台湾への武力行使を主張している」と反発した。「逃亡犯条例」改正を巡って混乱する香港のメディアも、中国軍の介入を懸念する声を上げている。

 周辺地域の緊張を高める力の誇示は、改めるべきだ。

 国防白書の発表には、中国軍の透明性を宣伝したいという意図があるとされている。

 ところが、今年の予算案で18兆円を超える国防費の内訳については明らかにしていない。宇宙空間やサイバー攻撃の戦略を担う新設の部隊に関して、説明は乏しい。

 周辺はもちろん、世界の警戒感は募る一方だろう。