新しいNHK会長に、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏(74)が決まった。

 経済界出身の会長は2008年以降、5代連続となる。来年1月24日に3年の任期を終える上田良一会長を含めた過去4人は、いずれも1期限りでの退任だ。

 上田氏は、テレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」へ道筋を付けたとされる。それがなぜ交代なのか。

 昨年、保険の不正販売を追及した番組を巡って日本郵政グループから抗議を受けたNHK経営委員会が上田氏を厳重注意した。上田氏は郵政側に事実上、謝罪した。

 この件で経営委は批判を浴びたが、会長も政権に近い組織からの圧力に過剰に身構えたといえ、NHKの自主性は大きく揺らいだ。

 経済界からの会長起用は政治のコントロールを効かせるため-などと勘ぐられてはなるまい。

 前田氏は記者会見で、「権力を持った政権が報道機関からチェックされるのは当たり前」と明言した。その上で、安倍晋三首相を囲む勉強会の一員であることを問われると「どこかの政権とべったりということはない」とした。

 政権とは一定の距離を保ち、国民目線に立った番組制作ができる環境を整えてほしい。公共放送を支える受信料には、政府や広告主の干渉を排除する意味があることを改めて認識すべきだ。

 NHKは、業務、受信料、組織統治の「三位一体改革」を迫られている。10月の消費増税時には受信料を据え置き、来年秋には2・5%の引き下げも予定する。

 それでも受信料収入は7千億円に上り、繰越金は1千億円超。ラジオも含めた9チャンネルは「民業圧迫」と指摘される。

 常時同時配信を巡っても、総務省や民間放送側から肥大化を懸念する声が聞かれる。ネット時代の公共放送のあり方を考え直す必要に迫られているのではないか。

 前田氏はメガバンクでの改革実績などが評価されているが、NHKの経営課題については「就任までに実態を把握したい」と述べるにとどまった。高齢に加え、家にパソコンを置かず、自身を「相当古い人間」とも語っている。

 パソコンやスマートフォンなどでの動画視聴が広がり、若者のテレビ離れが著しい現状への対応に手腕が発揮できるかは未知数だ。

 災害報道や時間をかけて作り込んだ番組など、NHKに期待する声は根強い。質の高い放送を続けるための努力を求めたい。