米軍が先月、戦闘中の限定的な核兵器使用を想定した新指針をまとめていたことが分かった。

 トランプ政権は核弾頭の小型化を進めている。新指針は戦闘の道具として核の役割を強調し、戦場での核攻撃の効用を主張。通常戦力の延長線上に位置づける傾向もうかがえる。

 危険と言わざるを得ない。限定核使用を是とすることは「核の役割増大」につながり、核使用のハードルが低下しかねない。複数の米専門家から懸念する声が上がっているのは当然だろう。

 米国では新政権が生まれるたびに「核体制の見直し(NPR)」を策定し、中期的な核戦略指針をまとめる。

 トランプ氏が2018年に承認したNPRは、競合国を圧倒する「比類なき」核戦力を追求する姿勢を鮮明にし、「使える核兵器」の開発にも踏み込んだ。

 広島型原爆より破壊力が小さい低出力型核、いわゆる「小型核」を潜水艦に搭載する新政策を打ち出した経緯がある。

 新指針はそれを土台に、内部文書「核作戦」として米統合参謀本部がまとめた。

 限定核使用の効用を「戦闘領域を根本から変え、司令官が紛争でどう勝利するかを左右する状況をつくり出す」と力説している。

 また核戦力を通常兵力と共同運用する重要性に触れ「陸上部隊や特殊作戦部隊は核爆発後の放射線環境下でも、全ての作戦を遂行する能力を保持しなくてはならない」と訴えている。

 背景にあるのは、ロシアや中国などの核戦力増強の動きだ。「ロシアに小型核使用を思いとどまらせる抑止力として米軍にも小型核が必要だ」との声もある。

 だが危機をあおって核強化を競うことになれば、かえって米国にとっての脅威となりかねない。放射線環境下での地上戦継続など現実離れしていないか。

 北朝鮮に非核化を迫りながら、核への依存を高めるのは身勝手すぎる。米政権はそのことを強く意識するべきだ。

 オバマ前政権時代は「核の役割低減」を目指した。それとは対照的に、現政権は冷戦時代に回帰するかのような動きが目立つ。

 世界の核弾頭数は以前より減ったとはいえ、ほぼ米国とロシアで占めている。小型化すれば世界の脅威が薄れるわけではない。

 むしろ核攻撃の危機が常態化する恐れがある。核軍縮に力を注ぐことが大国の役割だ。