7月10日に出版された土門蘭さんの書籍「経営者の孤独。」(ポプラ社刊)

7月10日に出版された土門蘭さんの書籍「経営者の孤独。」(ポプラ社刊)

「経営」ではなく「孤独」について経営者10人にインタビューした異色の本「経営者の孤独。」を、小説家兼ライターの土門蘭さん(33)=京都市左京区=が出版した。会社のトップが語る「人はみな孤独」というメッセージが反響を呼んでおり、土門さんは「生きづらさを抱える人に『孤独なのはあなただけじゃない』と伝えたい」と話す。

 土門さんがインタビューを始めたのは、ウェブマガジン「BAMP」編集長だった徳谷柿次郎さんの企画に関するツイッターを見たのがきっかけだった。<経営者の小さな声を取材していきたい。人間の弱さとか業とか。(中略)「友だちだったはずの社員が友だちじゃなくなったんだよ!」みたいな、普段は話せない葛藤を取材していきたい>

 土門さんは企画に参加し、昨年7月からBAMPで連載を開始。「人は誰もが『私の人生』という事業を営む『経営者』ではないのか」という視点で全国の経営者10人に「孤独とは何か?」を尋ねていった。

 エンターテインメント「リアル脱出ゲーム」を考案し、従業員約600人を抱える京都市発祥の企業「SCRAP」(本社・東京都)の社長加藤隆生さんは、アイデアを世に出すために、億単位の借金をして興業を打つリスクを語り「結局、不安を打ち消す処方箋なんてない。孤独というのか不安というのか闇というのか、それら全部に一定の対処法があるわけじゃない」と話す。

 300年近く続く呉服業「矢代仁(やしろに)」(京都市中京区)の9代目社長・矢代一さんは、家訓の精神「信じ合って物ごとに当たる」が経営の根底にあるとした。別の経営者は「寂しさはそこにあるもの。哀しみはいつか癒えるもの。孤独は逃れられないもの」と答えた。経営者たちは一人で全責任を負う立場であるがゆえに、誰もが悩む普遍的な「孤独」について明りょうな言葉で語る。

 ネットで連載が始まると、20~40代からツイッターやメールで反響が寄せられた。「誰もが孤独と知り、心が落ち着く」と記す30代の女性、「人間関係で悩んでいたが、心が軽くなった」「経営者も同じ人間と感じた」と共鳴する声もあった。

 土門さん自身、小学生の頃から学校になじめない「生きづらさ」を抱えてきた。「人は誰もが孤独だけど、その穴を埋めずに大事にすることで何かが生まれる。そんなことが伝われば」と話す。7月10日、ポプラ社刊、四六判、1836円。