出張の施術をする岡崎さん。肌をさするように専用のはりを動かし、刺激を与えていく(京都府向日市寺戸町)

出張の施術をする岡崎さん。肌をさするように専用のはりを動かし、刺激を与えていく(京都府向日市寺戸町)

 障害がある娘を育児中の女性が、「小児はり」を専門にした鍼灸(しんきゅう)院を京都府向日市の自宅で来春開業する。不安にさいなまれる日々の中で娘を思い、専門学校に通って資格を習得。訪問診療を始めている。「同じ立場の母親たちが笑顔になれる場所であれたら」と願う。


 同市寺戸町の岡崎美枝さん(42)。長女のりちさん(8)は、生後1カ月の健診時に医師から発達の遅れを指摘された。その後3カ月の時に、医師から「何らかの障害があると思う」と診断された。どこかで認めたくないと思っていた現実を突き付けられ、帰り道は夫と一言も話せなかった。岡崎さんは覚悟を決めた。「この子のためにできることをしよう」
 検査を重ね、療育にも取り組んだ。小児はりは、そんな時に母に勧められた。専用の器具で皮膚を優しくなでて、刺激を与える。施術を何度か繰り返した時に、当時起き上がることができなかった、りちさんが腕と足を伸ばして四つんばいになった。岡崎さんは言葉にならず、ただ涙がこぼれた。
 当時、障害のある子を育てる母親たちのサークルにも通っていた。りちさんの発達の遅れは原因が分からず、「なぜ」という思いと不安だけが募る日々に、前を向く彼女たちの強さに引かれていた。岡崎さんは「りちや、同じように悩んでいるほかのお母さんの力になれるかもしれない」と、小児はりを専門とした鍼灸の道に進もうと決意。専門学校に通い、育児の傍ら勉強を続けた。今春、国家試験に合格した。
 7月から乙訓地域で訪問診療を始めている。施術自体は数分で終わるが、1時間程度は一緒に過ごす。誰かに打ち明けることで肩の力を抜けた自身の経験から、育児に不安を抱える母親の話にそっと耳を傾ける。「頑張り屋さんのお母さんが頼れる場にしたい」。親子の笑顔が生まれるきっかけづくりになれば、と思っている。