ドライビングシミュレーターで運転操作のリハビリをする男性(東近江市北坂町・近江温泉病院)

ドライビングシミュレーターで運転操作のリハビリをする男性(東近江市北坂町・近江温泉病院)

 頭部の病気やけがの後遺症で、認知機能が低下し、体にまひなどの障害がある人を対象にした自動車運転再開支援の取り組みが県内で進んでいる。地方での生活には車が欠かせないが、病気や障害に起因する交通事故は後を絶たない。運転能力を適切に評価できる態勢の広がりが求められている。

 道路や街並みが映し出された画面が並び、手前にはハンドル、床にはペダルが置かれる。11月下旬の近江温泉病院(滋賀県東近江市)。県内唯一導入しているリハビリ用ドライビングシミュレーター(DS)に、6月に脳出血で倒れ、左手足にまひがある男性(51)が向き合っていた。
 片手で回せるよう、ハンドルに取り付けた補助器具を右手で握って操作する。終了すると、隣で動作を確認していた作業療法士が「ここはちゃんと左右の確認ができましたね」と振り返った。
 再開支援では、機能回復のためのリハビリの後、病気や障害がある上での運転技術を学び、免許の継続取得を目指す。
 同病院では、乗降訓練に加え、認知機能の机上検査のほか、DSで運転の操作や視野、注意力などの向上を図る。DSが一定操作可能とされると、八日市自動車教習所(同市)での実車練習に進み、機器や指導員による評価を行う。得られた注意力や体力などのデータは、免許継続判断に必要な診断書の作成に生かされる。
 運転には認知力や判断力、操作を瞬時に行う複雑な能力が求められる。運転再開支援の研究を進める滋賀医科大の一杉正仁教授(社会医学)は「病気や障害で一部の機能を失っても道具で補えたら問題ない」と説明。「支援でまひなどがある人も自信を持って運転し、社会に出やすくなる。能力が足りない人が運転をやめる決心もつく」と意義を語る。
 現在、同自動車教習所以外で、同様の取り組みをする所が、大津市や彦根市に2カ所ある。提携する病院にDSはないが、リハビリや教習所の講習の中で運転の能力を見極めている。
 県内の教習所や医療関係者らは支援の拡大を図り、情報共有や実務面での連携を深めようと、10月に協議会を発足させた。発起人の一人、一杉教授は「県内のどこでも同じ支援が受けられる態勢を作りたい」としている。