インターネット検索で、過去の逮捕歴や不名誉な情報が表示され続けるのを止められるかどうか。

 札幌地裁は、北海道内に住んでいた男性の逮捕歴に関する検索結果を一部削除するよう、検索大手の米グーグルに命じた。

 男性が不起訴になったことなどを考慮し、「公表されない利益が表示の維持を優越する」と判断した。

 ネット上で個人情報が簡単に検索でき、瞬時に拡散される中、残り続ける自身の情報削除を求める「忘れられる権利」が世界的な議論となっている。日本ではあいまいだった削除基準に関し、「この場合なら認められる」と示して一歩踏み込んだ判決といえる。

 検索結果の削除を求める訴えが相次ぐ中、最高裁は2017年1月の決定で「プライバシー保護」と「表現の自由」の利益を比較し、前者が明らかに優越する場合に限るとの判断枠組みを示した。

 知る権利などを重視して厳格な要件を満たすことを求めたと受け止められ、以降は削除を認めない司法判断が続いていた。

 札幌地裁判決は、男性が不起訴から7年がたった今も、転勤先で逮捕について聞かれるなど私生活上の不利益が大きいとし、検索結果を表示する社会的必要性を上回るとした。

 最高裁決定が比較衡量すべき6要素に挙げた、記載事実の性質や内容▽プライバシー被害の程度▽社会的地位や影響力▽公益性-などを検討し、嫌疑不十分で不起訴となったのに具体的な被害が生じたことを重くみたといえよう。

 最高裁が示したハードルの高さがどの程度なのかは明確といいがたい。どんな内容で、何年たてば公益性が薄らぐのか、一様の線引きは難しい。

 安易な削除は、知る権利や表現の自由の制約につながるだけに、個別事案ごとに丁寧に検証し、判断を積み上げるほかあるまい。今回の判決を、社会的な合意を築いていく足がかりにすべきだろう。

 政府が先月示した個人情報保護法改正案の骨子は、企業によるデータ乱用の抑止に力点を置く一方、忘れられる権利を位置づけることは見送られる方向だ。

 情報保護で先行する欧州連合(EU)は昨年施行した一般データ保護規則で同権利を規定し、個人情報が適切に扱われることは基本的人権だと掲げている。

 海外の取り組みにも学び、ネット情報の公益性と人権保護を担保するルールをどう定めるか、議論を深めていく必要がある。