英国の下院総選挙で、欧州連合(EU)からの離脱を訴えたジョンソン首相率いる与党保守党が過半数を獲得した。

 離脱案の批准の壁となっていた下院の承認が得られる見通しになり、ジョンソン氏が公約に掲げた来年1月末の離脱は実現の可能性が高まった。

 僅差でEUとの決別を決めた国民投票から約3年半を経て、英国世論を二分した離脱問題が動き出すことになった。

 下院は前回2017年選挙で、どの党も過半数に届かない状態となった。当時のメイ首相、ジョンソン氏とも少数与党政権で厳しい議会運営を強いられ、離脱問題は混迷の度を深めていた。

 今回の選挙戦でジョンソン氏は訴えの焦点を離脱問題に絞り、「混迷に終止符を打つのか、膠着(こうちゃく)状態や絶望、分断が何年も続く未来を選ぶのか」と呼び掛けた。

 政治の混乱が長引き、英国内には離脱の是非を巡る論争が繰り返されることへの不満が広がっていた。ジョンソン氏の訴えが閉塞(へいそく)感の打破を望む有権者の支持を集めたといえよう。

 ただ、ジョンソン氏や保守党が離脱を巡る懸念を払拭(ふっしょく)できたとは言い難い。

 選挙で勝利したとはいえ、数の力で異論を封じ、強引に離脱を進めるようであってはならない。国民の疑問や不安と真摯(しんし)に向き合いながら丁寧に離脱のあり方を議論すべきだ。

 二大政党の一角をなす労働党は離脱か残留かを明確に示せず、改選前の議席数を下回った。

 政権を奪還すればEUと新たな離脱案をまとめ、国民投票を再実施すると訴えたが、離脱を望む世論に響かなかったとみられる。

 保守党の勝利で、今後の焦点はEUとの貿易協定交渉に移ることになる。

 ジョンソン氏は「期間の延長はしない」と、来年12月末までの移行期限内での妥結を目指すとしているが、1年で交渉は終わらないとの見方も出ている。

 英国で製品をつくり、EU域内で販売している外国企業は工場の移転を進めている。国内経済は疲弊し、雇用不安も出ている。

 離脱後もEUの関税ルールを適用するとした英領北アイルランドについても、英本土との間で関税手続きが生じる可能性が指摘されるなど、国内の分断を心配する声が上がっている。

 国民が納得できる形で離脱できるのか。ジョンソン氏の手腕が問われる。