新しい部屋に引っ越してきてちょうど3カ月がたった。8月と9月、その前の2カ月ちょっともほとんど引っ越しのことでばたばたしていたので、今年の夏をまるまる使ってぼくは新しい町へとやってきた。

 お気に入りのご飯屋さんはまだまだ片手で数えるくらいだし、かけそばの醤油(しょうゆ)の濃い汁にはいつまでたっても慣れそうになくて、近所のミスタードーナツはなぜかあの最高な店内放送がかかっていなくて寂しい。それでも少しずつこの町を気に入ってきている。

 携帯を持たず知らない道を歩いて、自分がほんとうにどこにいるのかわからなくなる感覚が珍しくて楽しい。日が明るい時間でも簡単にさっき通った道がどっちだったかわからなくなってしまったりもするのだ。

 そのうちすぐになんとなく土地勘が身についてしまう、それまでの少しの間にしかできない不思議な散歩。石川から京都に来たとき以来、およそ9年ぶりにぼくはストレンジャーになって町を歩く。

 今はどことなくこちらを突き放してくるような態度のこの町も、すぐにぼくに慣れてしまうだろう。それは意外とあっという間で、ぼくはなんとなくそれを寂しく感じてしまうのだ。