東京電力福島第1原発の廃炉に向けた工程表「中長期ロードマップ」の改定案が示された。

 廃炉作業の最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しを、まず水素爆発を免れた2号機から2021年中に始めることが明記された。

 事故から8年9カ月。作業の段取りは一歩前進した形だ。

 だが、デブリの形状や堆積している範囲など未解明な点は多い。炉心溶融が起きた1~3号機はいまだ放射線量が高く、これまで以上に困難な作業となるのは必至だ。

 本当に実行できるのか。

 2号機からの取り出し作業は、ロボットアームでこすり取ったり吸い込んだりしてデブリを採取し、性質や状態の分析から始めるという。これまでの調査では小石状の塊を持ち上げることはできたが、硬くて動かせないデブリもあると思われる。

 燃料やコンクリートなどが混ざった状態で広がっているとみられ、2号機だけで237トン、1~3号機で推計880トンにもなる。完全除去には気が遠くなるような時間がかかりそうだ。

 1号機はデブリのようすを把握できておらず、3号機は使用済み核燃料の搬出が4年遅れで4月から始まったばかりだ。

 3基ともデブリの分布や格納容器内の水位などが異なる。それぞれに対応した取り出し方法の開発が必要で、場合によっては費用も時間もさらに膨らんでいく可能性がある。

 使用済み核燃料について、改定案は31年までに1~6号機全てで燃料プールに残る計4741体の搬出を終えるとしたが、見込み通りに運ぶ保証はない。

 ただ、改定案にデブリ取り出し開始時期が明示されたことで、東電などが目標とする工程は新たな段階を迎えた。情報公開や説明責任を尽くし、廃炉作業へ住民の理解を得る努力がこれまで以上に求められる。

 しかし、政府や東電には信頼づくりへの目配りを欠いたかのような対応がみられた。

 今秋、退任直前の環境相が第1原発にたまり続ける汚染処理水の海洋放出に言及し、大阪市長が同調する一幕があった。地元の漁業者などが反発し、放出への地ならしとの批判も出た。

 保管中の汚染処理水は増え続け、タンクの総容量は22年夏ごろに限界を迎えるとされる。政府や東電は増設のための敷地確保は難しいとの認識だ。

 発言の背景にはそんな切迫した事情もあろう。だが、海洋放出による風評被害を懸念する漁業者への丁寧な説明を欠いたままの「放出ありき」の姿勢は不信を招く。議論も進むまい。

 改定案では、事故から30~40年後とする廃炉完了目標は従来通りとされた。だが、仮に廃炉が実現しても、取り出したデブリや使用済み核燃料をどこに保管し、どのように処理するかという問題は残り続ける。

 過酷事故を起こした複数の原発を廃炉にする取り組みは世界的にも前例がなく、対応は世代をまたぐ長期戦となる。

 事故の記憶と課題解決の困難さへの関心を低下させない工夫が必要だ。その役割と責任が政府と東電に問われている。