朝比奈容疑者が乗っていた軽乗用車を調べる京都府警の捜査員(11月27日午後7時10分、京都市南区上鳥羽菅田町)

朝比奈容疑者が乗っていた軽乗用車を調べる京都府警の捜査員(11月27日午後7時10分、京都市南区上鳥羽菅田町)

 指定暴力団の山口組と神戸山口組の対立が激化する中、両組織の関係先がある京都でも警察が警戒を強めている。11月27日に兵庫県尼崎市で起きた銃撃事件では、容疑者が京都市南区の暴力団組織を次のターゲットにしていたことが判明するなど、抗争で市民が巻き添えになる事態も懸念される。京都府警は両組織を「特定抗争指定暴力団」に指定する作業を本格化させるとともに、他府県警と連携して抗争に歯止めを掛けたい考えだ。

 「京都の別の神戸山口組幹部を襲うつもりだった」。捜査関係者によると、尼崎市内で神戸山口組幹部を射殺したとして、兵庫県警に殺人容疑で逮捕された朝比奈久徳容疑者(52)はこう供述したという。
 朝比奈容疑者は尼崎市の現場から逃走後、京都市南区の国道1号と十条通の交差点付近で軽乗用車を運転中、府警に身柄を確保された。朝比奈容疑者が標的とした幹部の組事務所までわずか約2キロの地点で、京都で「第2の銃撃」が起きる一歩手前だった。
 組事務所は住宅街にあり、付近には宿泊施設もある。府警は現在、警察車両を組事務所前に横付けするなど24時間態勢で警戒を続けている。府内にある暴力団事務所の見回りや情報収集も進めており、捜査幹部は「市民が巻き添えになる事態は何としても避けたい」と語気を強める。
 こうした状況下、警察当局は山口組と神戸山口組の双方を「特定抗争指定暴力団」に指定する作業に乗り出した。両組織の拠点がある兵庫のほか、京都や大阪、愛知、三重、岐阜の6府県の公安委員会は今月20日以降、両組織の代表者から意見聴取を実施。手続きが順調に進めば、年内に指定が決まり、来年1月上旬にも官報に公示して効力が発生する見込みだ。
 指定されると、設定された「警戒区域」内で組員5人以上が集まったり、対立する組員に付きまとったりする行為が禁じられ、違反すればすぐに逮捕できる。京都では、京都市全域が警戒区域に設定される見通しとなっている。捜査幹部は「暴力団側に打撃となるのは間違いない。ただ警戒区域外に活動の場を移す恐れもあり、京都市外の警戒も強める必要がある」と語る。

■巡査部長「引いてはいけないという気持ちで、前に出た」

 京都府警が京都市南区で朝比奈容疑者を逮捕したのは、神戸山口組の幹部が兵庫県尼崎市で射殺された事件のわずか1時間後。朝比奈容疑者が次のターゲットにしていた組事務所は逮捕現場から約2キロしか離れておらず、危機的状況を寸前で防いだ形だ。容疑者を取り押さえた南署員が取材に応じ、「市民に危害が加えられる前に逮捕できて良かった」と語った。
 南署地域課の男性巡査部長(30)は同僚とパトカーで警戒中、朝比奈容疑者が京都入りしたとの無線連絡を受けた。他のパトカー2台とともに逃走車両を追跡して取り囲むと、朝比奈容疑者が車を降り、パトカーに拳銃を向けてきたという。巡査部長は「恐怖心はあったが、絶対に引いてはいけないという気持ちで、前に出た」と振り返る。
 凶悪事件の容疑者逮捕に貢献したとして、府警は今月、巡査部長を含む当時の南署員7人(うち1人は異動)を表彰した。植田秀人本部長は「流れ弾で一般市民が巻き添えになる危険もあった。的確に連携をとり、被害を防ぐことができた」とたたえた。