「芦生ワサビ」を守るためのシカよけネットを設置するプロジェクトメンバー(南丹市美山町芦生)

「芦生ワサビ」を守るためのシカよけネットを設置するプロジェクトメンバー(南丹市美山町芦生)

氷河期から生き続けている芦生固有の自生ワサビ(南丹市美山町芦生)

氷河期から生き続けている芦生固有の自生ワサビ(南丹市美山町芦生)

 京都府南丹市美山町芦生でシカの食害によって絶滅の危機にある自生ワサビを保全し増やすプロジェクトが、京都大、岐阜大、山口大と「芦生わさび生産組合」の共同で始まった。氷河期から生き残ってきた学術的に貴重な固有種で、その価値を広く知ってもらうとともに地域資源としての活用を目指す。

 プロジェクトメンバーでワサビの起源や進化に詳しい岐阜大の山根京子准教授(遺伝育種学)によると、芦生に自生するワサビは氷河期に大陸から伝わって以来、交配することなく当時のままで残っていることがDNA分析で判明している。
 芦生では古来、このワサビが多く自生し、地元の人たちが食してきたが、近年、増えたシカの食害でかつての繁殖地も姿を消した。芦生区は5年前、自生ワサビの保存田を設置、村おこしの一つとして組合を結成してワサビ栽培を始めた。ただ、種は他県から取り寄せたものだ。
 共同プロジェクトでは、わずかに残る自生ワサビの周囲と新たに種が根付きそうな所にシカよけネットを設置していく。今月上旬には、山根准教授や京都大芦生研究林長の石原正恵准教授(森林生態学)、山口大の内田恭彦教授(経営学)、組合員らメンバーが山中を巡って作業した。
 さらに、このワサビの価値を広く知ってもらうために、地元で毎年4月に営まれる伝統祭事「わさび祭り」を文化財に指定するよう行政に働きかける。
 今井崇組合長は「若者たちが住み続けられる状況をつくっていく取り組みの一つ」と位置づけ、山根准教授らは「自生ワサビが保全され、経営的にも生かせるようなシステムを構築したい」としている。