性犯罪の処罰範囲を拡大するかどうか、上川陽子法相の諮問を受け、刑法の規定見直しの検討が法制審議会で本格化する。

 最大の論点は、強制性交や強制わいせつ罪で、加害者からの「暴行・脅迫」があったことが成立要件となっている点だ。

 現在はこの要件を立証しないと罪に問えないが、被害者団体は「実態に合っていない」と批判し、「同意のない性交」全てを処罰とすべきだと訴えている。

 性犯罪は心身を深く傷つけ、「魂の殺人」ともいわれる。被害の実態に即した法改正につなげるべきだ。

 性暴力被害者らの団体が行った調査では、被害に遭った際「体が動かなかった」「何が起きているか分からなかった」などの回答が多数あった。

 暴行や脅迫がなくても抵抗ができない状態に陥る実態が明らかになっている。

 法務省の検討会では、相手の同意のない性交については処罰すべきだとの方向性では一致したが、「不同意」のみを要件とするのは不十分として、冤罪(えんざい)防止のために処罰範囲を明確にすべきとの意見が目立った。5月にまとめた報告書では、厳罰化と慎重論を併記するにとどまった。

 冤罪は、取り調べに弁護士が立ち会ったり、否認の場合は身柄を拘束しなかったりすることで抑止策を図ることもできよう。

 欧州などでは不同意性交を処罰する流れが進み、スウェーデンでは自発的な性交でなければ犯罪とみなす法律規定ができている。

 法制審ではこれらの事例も参考にして、冤罪の可能性にも配慮しながら、より明確な基準づくりを探ってほしい。

 今回、欧米に比べて低いとされる性交に同意できる年齢(13歳)の引き上げも審議される。

 そもそも「性的同意」の概念が十分に浸透していないと指摘する識者もいる。性教育の内容や重要性も併せて議論すべきだろう。

 性犯罪に関する刑法規定は2017年に一部厳罰化されるなど改正化されたが、この間、性暴力事件の裁判で性被害の実態を認定しながら加害者を無罪とする判決が相次いだ。また、被害者たちが実名で体験を語り、各地の「フラワーデモ」で性暴力撲滅を訴えてきた。

 性被害の泣き寝入りをなくすためにも、当事者たちの願いに真摯(しんし)に耳を傾け、今回の議論を社会全体で性暴力の問題を捉え直す機会としたい。