今年の冬のビッグニュースは、Facebookが社名をMetaに変更し、スタートからメタバース構築に約1兆1000億円を投資、1万人の雇用を行うという事でした。アメリカでは、Metaの他にもMicrosoftやNVIDIAがビジネスを展開、ゲーム業界ではEpic Gamesなどがいろいろな形でビジネスチャンスを探しています。検索エンジンやOSにおいて圧倒的な資本力でグローバルスタンダードを勝ち取ったように、この分野の主導権争いもやはりアメリカに軍配が上がるのでしょう。

 Meta(超越)とUniverse(宇宙)を組み合わせた造語であるメタバースはデジタル仮想空間を意味しています。日本では、2022年からANAやグリー、JTB、パソナなどがメタバース事業に本格参入するので、「メタバース元年」と言えると個人的に思っています。

 メタバースはどのようなものか分からないと言われる方も、身近なところでは任天堂のゲームソフト「どうぶつの森」シリーズで体験されている方も多いでしょう。古くはLinden Labの「Second Life」が有名で、リリース当時は注目を集め盛り上がりましたが、時が早すぎてうまくいかなかったと言われています。雰囲気が暗かったり、イベントが少なかったり、過疎のイメージが強く、操作も難しいなど、受け入れられなかった要素は今ならいくらでも言えますが、現在は少しずつ盛り返しているようです。当時はわれわれも「Second Life」で有名百貨店、自動車メーカー他、多くの企業の制作を担当しました。

 さて、現在は5Gが普及し始め、多くの人がスマホを使っている現状を鑑みればメタバースを成功させる要因は沢山あります。5Gのメリットであるハイスピード、低遅延、多接続だけをとってもメタバース構築には大きなメリットになります。また、スマホではガラケーと違って画面をタッチしてアバターを動かせるために直接的な操作が可能になります。そして、スマホのコンテンツを開発しているわれわれにとっても、日々のコンテンツ運営のノウハウがあるためにフォローの風が吹いています。開発に必要な企画、デザイン、プログラム、作曲、サーバー運営、デバッグまで、全ての人材が会社の中に多数いるからです。

 メタバースでは、現状の世界にあるほとんどのことが体験できるので、企業はメタバース事業への参入を前向きに検討するべきだと思います。eコマースや広告、ゲームだけでなく、観光、文化、趣味、生活、医療、出会いなどの要素を自分の分身であるアバターを通じて実感することができ、皆様のビジネスへとつながるからです。

 例えば、リアルとも連動しているので、アバターが買った品物が実際に手元に届きます。旅行や文化体験やメタバース上で得た知識も実際に皆様のものとなります。ビジネスはリアルとメタバース上の両方でできるのでチャンスが2倍になり、それ以上に皆様がアバターに親近感を覚えるとアバターに服を買ったり、ペットを飼ったり、友達をつくったりというマネタイズの要素が新たに出現します。今流行りのNFTもメタバース上でアバターが見たり、体験したり、買ったりも出来ます。通貨も仮想通貨だけでなく、皆様が大量に蓄えているポイントも使えるので購入意欲も増加します。

 2022年がメタバース元年になるように、いろいろなアイデアを出しながら多くの異業種とコラボして取り組んでいきたいと思います。

 さいとう・しげる 立命館大理工学部卒。1979年4月、東亜セイコー入社。同11月、トーセを設立し、独立。87年2月、社長。2004年9月からCEO(最高経営責任者)兼務。15年12月から会長。現在、京都商工会議所副会頭、SCREENホールディングス社外取締役、ワコールホールディングス社外取締役などを務める。京都府大山崎町出身。64歳。