18 October 2021

草木の聲
緑 vol.1

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

植物の緑、その緑がなぜか染まらない。あの瑞々しい緑の葉っぱを絞って白い糸に染めようとしても緑は数刻にして消えてゆく。どこへ —。

志村ふくみ『ちよう、はたり』(ちくま文庫)

梔子と刈安の染糸
梔子の染糸を藍甕に浸す
 
染めたばかりの緑
藍甕
緑の無地

 山々の木々は緑に満ちあふれていて、葉っぱを採集して染めれば、すぐにでも緑色に染まりそうな気がします。しかしどんな植物の葉を染めても、緑色に染まることはまずありません。たいていの場合はグレーやベージュ色になるでしょう。カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、ノニンジンなど、春草から淡い黄緑色は染まりますが、しっかりした緑色には決して染まらないのです。どうして植物はこんなに緑色をしているのに、緑色が染まらないのか。自然の不思議です。

 緑色に染めるには、刈安、梔子(くちなし)、黄檗などで染めた黄色の糸を藍甕につけます。他の色と違って緑色だけは黄と藍の混合色なのです。工房では刈安を最もよく使いますが、それも刈安の緑みがかった黄色に藍を掛け合わせると、非常に美しい緑色になるからです。染めのときには、黄色と藍色のバランスがとても大切で、両者がちょうど調和したときに美しい緑色がうまれます。そういう意味では黄と藍の調和の色、均衡の色と言えます。

アトリエシムラ代表 志村昌司